「欲しかったスニーカー、デザインは最高なんだけどサイズが1cm大きいものしか残っていなかった」「ネットで注文したら思ったよりブカブカで、かかとが浮く感じで歩きにくい」なんて経験はありませんか。
せっかく手に入れたお気に入りの一足ですから、なんとかして快適に履きたいと思うのは当然のことです。実は、スニーカーや中敷きのサイズ感に関する知識があれば、1cm程度の誤差は許容範囲として十分に調整可能なケースが多いのです。
この記事では、スニーカーが1cm大きい時の調整方法や、ダイソーなどの100均アイテムを使った手軽な対策について、私自身の経験も踏まえて詳しくご紹介していきます。
- 1cmの余裕は実は正しいサイズ感かもしれないという事実
- 家にある靴紐だけでフィット感を劇的に変えるヒールロックの結び方
- プロも推奨するタンパッドを使って甲をしっかり固定するテクニック
- ダイソーやセリアなど100均グッズを活用したコスパの良い対策
スニーカーが1cm大きい時の調整が必要な許容範囲
「サイズが大きすぎる失敗をしたかも」と落ち込む前に、まずはそのスニーカーとご自身の足の関係を冷静に見直してみましょう。実は、スニーカーにおいて「1cm大きい」という状態は、必ずしも悪いことばかりではありません。
むしろ、ジャストサイズだと思っていたものが実は小さすぎて、1cm大きい方が足には良いというケースさえあります。ここでは、調整が必要なラインと、そのまま履き続けるリスクについて解説します。
1cm大きいサイズは許容範囲かチェック
まず最初にお伝えしたいのは、スニーカーには本来「捨て寸(すてすん)」と呼ばれるつま先の余裕が必要不可欠だということです。「サイズを間違えて大きすぎるものを買ってしまった」と焦る前に、まずは冷静にその「1cmの隙間」が本当に過剰なものなのかを確認しましょう。
一般的に、足の実寸(実際の足の長さ)に対して、靴のサイズは1.0cmから1.5cm程度の余裕がある状態が理想的とされています。これは、スニーカーに限らず革靴やブーツでも同様です。
なぜ「捨て寸」が必要なのか?
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「ピッタリした靴の方が歩きやすいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実は人間の足は、歩行時に体重がかかると土踏まず(アーチ)が沈み込み、足全体の長さが数ミリから1センチ近く伸びることがあります。
もし、つま先に余裕がないジャストサイズの靴を履いていると、歩くたびに伸びた足の指先が靴の内側にガンガン当たり続けることになります。これが、爪の内出血(爪下血腫)やハンマートゥ、巻き爪といったトラブルの大きな原因となるのです。
捨て寸(つま先の余裕)の目安 多くの靴メーカーやスポーツ医学の観点でも、歩行時の足の前後動を考慮し、つま先に適度な空間を持たせることを推奨しています。 (出典:ミズノ公式オンライン『【シューズ】サイズの選び方』)
インソールを外して目視で確認する方法

その1cmが「適正な捨て寸」なのか「単なるオーバーサイズ」なのかを見極める、最も簡単で確実なプロの裏技があります。それは、一度スニーカーからインソール(中敷き)を取り出して、その上に足を乗せてみるという方法です。
- スニーカーからインソールを取り出し、床に置きます。
- インソールのかかと部分に、自分のかかとをピッタリ合わせます。
- その状態で真っ直ぐ立ち、つま先にどれくらい余白があるかを見ます。
この時、つま先に指1本分(約1.0cm〜1.5cm)の余白が残っていれば、それは大きすぎるのではなく「適正サイズ」です。逆に、この余白が2cm以上ある場合や、逆に5mm以下しかない場合はサイズ選び自体に無理がある可能性があります。
つまり、もしあなたが「つま先が1cm余っている」ことだけを気にしているなら、それは許容範囲内であり、むしろ足にとっては健康的な状態である可能性が高いのです。
調整が必要なのは「ホールド感」がない時

では、何を基準に調整すべきかを判断すれば良いのでしょうか。問題の本質は、つま先の隙間の有無ではなく、「カカトが浮いてパカパカする」「靴の中で足が前後左右に滑る」というフィット感の欠如にあります。
つま先に1cmの余裕があっても、甲やカカトでしっかり足が固定されていれば、靴は重さを感じさせず快適に歩けます。逆に、この「固定(ロック)」が甘いと、足が無意識に緊張し、疲れや痛みを引き起こします。
結論として、「1cm大きい」というのはサイズ調整で十分にカバーできる範囲、あるいは理想的な範囲です。ここから先は、その余裕を活かしつつ、いかにして足を靴の中で安定させるかという「調整テクニック」に焦点を当てていきましょう。
大きい靴を履き続けると起きる問題

「大は小を兼ねるから、紐さえきつく縛ればなんとかなる」と考えて、ブカブカのスニーカーを無理して履き続けていませんか?実は、きつい靴と同様に、大きすぎる靴もまた、足の健康を著しく損なう危険性をはらんでいます。
サイズ調整を行わずに歩き続けると、私たちの体は無意識のうちに「靴が脱げないように」という防衛本能を働かせます。この無意識の動作が、長期的には骨格の変形や慢性的な不調を引き起こす原因となるのです。
「すり足」と「踏ん張り」が引き起こす足トラブル
サイズが合っていない大きい靴を履いている時、足元では以下のような悪循環が起きています。
- 指の変形(ハンマートゥなど): 靴の中で足が前に滑るのを防ごうと、無意識に足の指を折り曲げてインソールを掴むような動作(グリッピング)を続けてしまいます。これが癖になると、指が曲がったまま固まる「ハンマートゥ」や「屈み指」の原因になります。
- 深刻な「むくみ」と冷え: カカトが浮くのを防ぐために、足首を固定してズリズリと歩く「すり足」になりがちです。ふくらはぎの筋肉が正しく使われないため、ポンプ機能が低下し、夕方にはパンパンにむくんでしまいます。
- アーチの崩れ(扁平足・開張足): 足指を正しく使って蹴り出すことができないため、足裏の筋力が低下し、土踏まずのアーチが崩れてしまいます。これが外反母趾の悪化や足底筋膜炎の呼び水となります。
注意:摩擦による皮膚トラブルも 靴の中で足が常に前後左右に動いている状態は、いわば「おろし金」の上で足を擦っているようなものです。この過剰な摩擦熱によって、足裏に分厚い「タコ」や芯のある「魚の目」ができやすくなり、歩くたびに痛みを伴うようになります。
大切なスニーカーの寿命も縮める
被害を受けるのは人間の体だけではありません。奮発して買ったお気に入りのスニーカー自体も、サイズが合っていないことでボロボロになりやすくなります。
特にダメージを受けやすいのが、スニーカーの「腰裏(こしうら)」と呼ばれるカカトの内側の生地です。歩くたびにカカトが浮いて擦れるため、この部分の布地がすぐに磨り減って破れてしまいます。中のプラスチック芯やスポンジが見えてくると、修理には数千円のコストがかかってしまいます。
また、靴下のかかとや親指部分にすぐに穴が開いてしまうのも、多くの場合、靴が大きすぎることが原因です。「たかが1cm」と思わずに調整を行うことは、ご自身の健康と、大切なスニーカーを長くきれいに保つために必要不可欠なステップなのです。
かかとが浮く原因はサイズ以外にもある

「サイズは1cm大きいはずなのに、なぜか歩くとかかとがスポスポ抜けてしまう」 もしそんな感覚があるなら、原因は足の長さ(レングス)ではなく、靴と足の「立体的な形状」が合っていないことにあるかもしれません。
多くの人は「靴のサイズ=縦の長さ」と考えがちですが、スニーカーのフィット感は「長さ」「幅(ウィズ)」「甲の高さ」「カカトの大きさ」の4点で決まります。特に見落とされがちなのが、以下の2つのパターンです。
1. 「甲」が薄くて前滑りしている(前滑り現象)
最近、特に若い世代で増えているのが、足の幅が狭く甲が薄い「甲薄幅狭(こううすはばせま)」タイプの方です。
このタイプの足の方が、標準的な幅や広めのスニーカーを履くと、アッパー(靴の甲部分)と足の間に空間ができてしまいます。すると、下り坂を降りる時のように、歩くたびに足が靴の中でズルッと前に滑ってしまいます(前滑り)。
結果として、足がつま先側に突っ込むことでカカト側に大きな隙間が生まれ、「サイズが大きすぎた」と錯覚してしまうのです。この場合、本当の問題は長さではなく「甲の抑えが効いていないこと」にあります。
紐を限界まで締めても緩い? 靴紐をギュウギュウに締めても、左右の羽根(紐を通す穴があるパーツ)がくっついてしまい、それ以上締められない状態になっていませんか?これは典型的な「甲の高さが足りていない」サインです。
2. カカトのカーブ(ヒールカップ)が合っていない
もう一つの原因は、スニーカーの命とも言える「ヒールカップ(カカトを包む部分)」の大きさです。
海外ブランドのスニーカーなどは、モデルによってはカカトの作りが大きめに設計されていることがあります。一方で、日本人のカカトは比較的小さめでカーブが緩やかな傾向があります。
足の長さが合っていても、カカトの骨を引っ掛けるフックの役割をする部分が大きすぎると、当然ながら歩くたびにカカトは抜けてしまいます。「サイズは合っているはずなのに、なぜかカカトだけが浮く」という場合は、このヒールカップとの相性不一致が疑われます。
「埋める」ではなく「止める」発想が必要
これらのケース(甲が低い、カカトが小さい)の場合、単につま先に詰め物をして前後の長さを埋めても問題は解決しません。足が前滑りし続ける限り、痛みや違和感は消えないからです。

重要なのは、隙間を埋めることよりも、「甲を上から押さえて、足が前に滑らないようにロックする」というアプローチです。次章から紹介する調整方法は、まさにこの「足を正しい位置で止める」ために非常に有効なテクニックとなります。
つま先の詰め物だけで調整するのは危険
サイズが大きい靴を履いた時、多くの人が真っ先に思いつく対処法が、つま先の余った空間にティッシュやスポンジなどの「詰め物」をすることではないでしょうか。
確かに、物理的に隙間を埋めれば足は前後に動かなくなります。しかし、結論から言うと、つま先に詰め物をして調整する方法は、足の健康を守る上で最も推奨できない「最終手段」だと考えてください。
なぜ「つま先」を埋めてはいけないのか?

前のセクションでも触れましたが、スニーカーには歩行時に足が前後に伸びるための「捨て寸(余裕)」が絶対に必要です。つま先に詰め物をするということは、この「足の逃げ場」を自ら塞いでしまう行為に他なりません。
特に危険なのが、応急処置としてよくやられる「ティッシュペーパー」を詰める方法です。
- 硬化する: ティッシュは足の汗や湿気を吸うと、乾いた後にカチカチに固まってしまいます。
- 衝撃吸収性がない: クッション性がないため、歩くたびに石のように硬い塊が指先に当たり続けます。
- 形状が合わない: 足の指の形(ラウンド状)にフィットせず、特定の指だけを圧迫してしまいます。
爪トラブルの最大要因に 逃げ場を失った足の指が、硬い詰め物に圧迫され続けると、爪が皮膚に食い込む「巻き爪」や、爪の下で内出血を起こして黒くなる「爪下血腫」を引き起こすリスクが激増します。最悪の場合、指の関節が曲がったまま戻らなくなることもあります。
調整の基本は「甲」と「カカト」
スニーカーのサイズ調整における鉄則は、「つま先の空間は聖域として残し、それ以外の部分で足を固定する」ことです。
まずは後述するインソールやタンパッド、靴紐の結び方などを駆使して、「甲」と「カカト」で足をロックすることを最優先に考えてください。これらがしっかりと機能していれば、つま先に1cm〜2cmの空間があっても、足は決して遊ぶことなく快適に歩くことができます。
どうしても詰め物を使う場合の条件
「他の方法をすべて試したが、どうしてもあと数ミリだけ調整したい」「指が遊ぶ感覚がどうしても気になる」という場合に限り、補助的に詰め物を使用することはあり得ます。ただし、その場合は以下の条件を必ず守ってください。
安全な詰め物の選び方
- 専用品を使う: 100均や靴屋で売られている、靴調整専用の「つま先クッション」を購入してください。
- 低反発素材: 指が当たっても痛くない、柔らかい低反発ウレタンやスポンジ素材のものを選びます。
- 形状: 自分のスニーカーのつま先形状(尖っているか、丸いか)に合ったものを選び、無理に押し込まないようにします。
つま先クッションはあくまで「サイズ調整の最後の微調整」として使い、決してメインの解決策にはしないこと。これが、足の健康を守りながらお気に入りの靴を履きこなすための重要なポイントです。
スニーカーが1cm大きい時に役立つ調整グッズと技

ここからは、実際に1cm大きいスニーカーを快適に履くための具体的なテクニックをご紹介します。お金をかけずに今すぐできる方法から、100均アイテムを活用した裏技まで、効果が高い順に見ていきましょう。
インソールや中敷きを重ねる方法
サイズ調整の王道にして、最も手軽に試せるのがインソール(中敷き)を使った調整です。多くの人が「ただクッション性を良くするため」のものだと思いがちですが、サイズ調整においてインソールは「靴の中の空間(体積)を減らす」という極めて重要な役割を果たします。
靴底全体を物理的に底上げすることで、足の甲が持ち上がり、アッパー(靴の天井部分)との隙間が埋まります。これにより、緩かった靴が驚くほどフィットするようになります。
1. 「交換」か「重ね入れ」か?最適なアプローチ
1cmもサイズが大きい場合、ドラッグストアで売っているような薄いインソールを1枚入れただけでは、調整不足でまだブカブカすることがあります。そこで、以下の2つのアプローチを検討してみてください。
- 厚手の高機能インソールに「交換」する: 多くのスニーカーに最初から入っているインソールは、実はペラペラの薄いスポンジであることが多いです。これを、スポーツブランド(ニューバランスのRCPシリーズなど)や、インソール専門メーカーの厚手で立体的なインソールに丸ごと交換します。これだけで厚みが数ミリ増し、フィット感と歩きやすさが劇的に向上します。
- 既存のインソールと「重ねて」使う: 元のインソールを活かしたい場合は、その上、もしくは下に別のインソールを重ねます。単純に厚みが出るため、1cmのサイズダウンにはこの「2枚重ね」が非常に有効です。
プロも使う裏技:「下に重ねる」 インソールを重ねる際、元のインソールの上に新しいものを敷くと、靴を脱いだ時にデザインが変わって見えてしまいます。 そこで、「100均の平らなインソールを一番下に入れ、その上に元のインソールを戻す」という方法がおすすめです。これなら見た目は純正のまま、履き心地だけをタイトに調整できます。
2. 1cm大きい場合に選ぶべきインソールの種類
サイズを大きく詰めたい場合は、平らなタイプよりも「カップインソール」と呼ばれる、カカト部分が立体的に包み込むような形状のものを選びましょう。
カップインソールは厚みがあるものが多く、カカトと土踏まず(アーチ)をしっかり支えてくれるため、靴の中で足が前滑りするのを防ぐ効果も高くなります。「厚手」かつ「立体的」なもの選ぶのが、1cmの隙間を埋める成功の鍵です。
3. 注意点:カカトが浅くなる「副作用」
インソール調整は万能に見えますが、一つだけ大きな弱点があります。それは、「底上げしすぎるとカカトの位置が浅くなる」という点です。
厚みを出せば出すほど足の位置が高くなるため、本来カカトを包み込んでくれるはずの「ヒールカウンター(靴のカカトの壁)」から、自分のかかとがはみ出しそうになってしまうのです。
逆に脱げやすくなることも 欲張って分厚すぎるインソールを入れると、カカトの引っかかりがなくなり、歩くたびにスポスポと脱げやすくなってしまう(ホールド感が失われる)ことがあります。また、甲が天井に押し付けられすぎて圧迫感が出ることもあります。
もしインソールを入れてみて「カカトが浅くて不安だ」と感じたら、無理にインソールだけで1cmすべてを埋めようとせず、後述する「タンパッド」や「靴紐の結び方」と組み合わせて、複数の方法で少しずつ調整するのが正解です。
靴紐の結び方ヒールロックで固定する
「今すぐ外出先で歩きにくくて困っている」「まだインソールなどの調整グッズを買う決心がつかない」という方に、私がまず最初に試してほしい最強のライフハックがあります。それが、靴紐の結び方ひとつでフィット感を劇的に変える「ヒールロック(別名:ダブルアイレット)」というテクニックです。
多くのスニーカーには、足首に一番近い場所に「使ったことがない予備の穴」がもう一つ空いていることにお気づきでしょうか?実はあの穴は飾りではなく、このヒールロックを行い、カカトを強力に固定するために存在しているのです。
【図解なしでも分かる】ヒールロックの完全手順
この結び方は、紐の摩擦とテコの原理を利用して足首をホールドします。一度覚えてしまえば一生使える知識ですので、ぜひ今手元にあるスニーカーで試してみてください。
- 準備:まず、一番上の「予備の穴」の一つ手前まで、いつも通りに紐を通しておきます。

- 輪っか(ループ)を作る:紐をクロスさせずに、「同じ側の」一番上の穴に、「上(外側)から」通します。紐を全部通しきらずに、小さな輪っか(ループ)を残した状態にします。左右両方とも同じように輪っかを作ります。
- クロスして通す:左側の紐の先端を「右側の輪っか」に、右側の紐の先端を「左側の輪っか」に通します。
- ロック(締め上げ):ここが重要です。紐の先端を、真横ではなく「真下(カカト方向)」に向かってギュッと引きます。すると輪っかが収縮し、足首の付け根がガッチリとロックされます。
- 結ぶ:最後にいつも通り蝶結びをして完成です。
調整のポイント 紐を締める際、足がつま先の方へ移動しないよう、カカトをトントンと地面に打ち付けて、カカトをヒールカップの最後部に密着させてから締め上げてください。
1cmの隙間があっても脱げなくなる理由
通常の結び方が「面」で足を押さえるのに対し、ヒールロックは「点」で足首を関節ごと固定します。これにより、つま先に1cm以上の余裕があっても、足が靴の中で前後にスライドすることが物理的にできなくなります。
「カカトが浮く」という現象が嘘のようになくなり、足と靴が一体化したような感覚を得られるはずです。ランニングシューズなどでも採用される本格的な結び方なので、その効果はお墨付きです。
締めすぎには注意! ヒールロックは固定力が非常に強いため、あまり強く締めすぎると足首の前側が圧迫されて痛くなったり、うっ血したりすることがあります。「痛気持ちいい」くらいの手前で、適度な強さに調整してください。また、脱ぐときは少し手間がかかりますが、快適さとのトレードオフと考えてください。
タンパッドで甲を抑えるプロの裏技
インソールを入れてもまだカカトが浮く、あるいはインソールを入れると足の指が天井に当たって痛い…。そんな時に私が最もおすすめしたい、プロのシューフィッターも現場で多用する秘密兵器が「タンパッド(タンパッド)」です。
これは、スニーカーのシュータン(ベロ/紐の下にある泥除け部分)の裏側に、クッションパッドを貼り付けるという調整方法です。あまり一般的ではありませんが、一度その効果を知ると手放せなくなるほど強力なテクニックです。
「下から」ではなく「上から」攻めるメリット
インソールが「足の裏を持ち上げて(底上げして)隙間を埋める」のに対し、タンパッドは「上から甲を押さえつけて隙間を埋める」という逆のアプローチを取ります。これには、インソールにはない決定的なメリットがあります。
- カカトが浅くならない: 足の位置が高くならないため、カカトがヒールカップから溢れることがなく、ホールド感を損ないません。
- 指先が圧迫されない: パッドが当たるのは「甲」の部分だけなので、つま先の空間(捨て寸)は確保されたまま、指先は自由に動かせます。
- 見た目が変わらない: 靴を脱いでも、パッドはベロの裏に隠れているので、外からは全く見えません。
なぜ「前滑り」が止まるのか?

スニーカーが1cm大きい時に起きる最大の問題は、歩くたびに足が靴の前方へ滑ってしまう「前滑り」です。これにより、カカトに隙間ができ、パカパカと浮いてしまいます。
タンパッドを貼ると、ふっくらとしたクッションが甲の最も高い部分(インステップ)に適度な圧力をかけます。すると、足全体が「後ろ(カカト側)」へ押し付けられるように固定されます。
カカトが吸い付く感覚 足が正しい位置(ヒールカップの奥)に留め置かれるため、結果としてカカトの浮きが解消されます。「カカトが浮くからカカトに何かを貼る」のではなく、「甲を止めてカカトを密着させる」というのが、プロの視点での正解なのです。
どんな人におすすめ?
特に、足の甲が薄い「甲薄(こううす)」タイプの方や、ローカットのスニーカーでくるぶしが当たって痛いという方には特効薬となります。
専用の「レザータンパッド」などもネット通販で千円程度で販売されていますが、実はわざわざ専用品を買わなくても、身近なあるもので代用することが可能です。次の章では、それを100均アイテムで実践する方法をご紹介します。
ダイソーなど100均で買える調整用品
「調整にお金をかけたくない」「とりあえず安く試してみたい」という方にとって、ダイソーやセリアなどの100円ショップは最強の味方です。最近の100均インソールは驚くほど進化しており、下手な靴屋のレジ横商品よりも種類が豊富で高機能なものが揃っています。
1cmのサイズオーバーを調整するために、特にダイソーでチェックすべきアイテムを具体的にご紹介します。
1. 立体型「カップインソール」(推奨度:大)
スニーカー調整の第一選択肢となるのが、足の裏の形に合わせて立体成型された「カップインソール」です。ダイソーには、EVA素材(軽量スポンジ)やジェル素材など様々な種類があります。
1cmの隙間を埋めるなら、できるだけ「厚手」で「カカト部分が深い」ものを選んでください。平らな中敷きよりも靴の中の体積を大きく減らせるため、フィット感が格段に向上します。
2. 低反発インソール
「低反発」と書かれたインソールも狙い目です。足を入れるとゆっくり沈み込み、足の形に合わせて隙間を埋めてくれます。厚みがあるタイプが多いので、サイズ調整力は高めです。
3. つま先用クッション(低反発タイプ)
前の章で「詰め物は最終手段」とお伝えしましたが、どうしてもつま先の空間が気になる場合は、ダイソーのフットケア売り場にある「つま先用クッション」を探してみてください。
ティッシュと違って、足の指の形状に合わせて作られた低反発ウレタン素材のものなら、指への負担を最小限に抑えつつ前滑りを防止できます。ただし、無理に押し込むのはNGです。
サイズの選び方 100均のインソールには「男性用(24〜28cm)」「女性用(22〜25cm)」などのサイズ表記があります。スニーカーのサイズに合わせて、少し大きめのものを買い、ハサミでカットして微調整するのが基本です。
セリアのアイテムで安く対策するコツ
「オシャレな雑貨」のイメージが強いセリアですが、実はフットケア用品、特に靴のサイズ調整グッズに関しては非常にマニアックで優秀な品揃えを誇ります。女性用のパンプス調整グッズが充実していますが、これらはスニーカーにも流用できる「宝の山」です。
部分用ジェルパッドの活用
セリアで特におすすめなのが、透明な「ジェルパッド」シリーズです。「土踏まず用」「カカト用」「つま先用」など、部位ごとに細分化されて販売されています。
全体の中敷きを入れると窮屈になりすぎる場合は、この部分用パッドを使って「カカトだけ」「土踏まずだけ」をピンポイントで埋めることができます。粘着タイプが多いので、靴の中でズレにくいのもメリットです。
100均アイテムを「仮合わせ」に使う賢い方法
私が考える100均グッズの最大の活用法は、「高価なインソールを買う前のシミュレーション(仮合わせ)」として使うことです。
スポーツブランドの高機能インソールは2,000円〜5,000円ほどしますが、サイズ感が合うか分からない状態でいきなり買うのは勇気がいりますよね。そこで、まずは100均アイテムで試してみるのです。
- 「厚手のインソールを入れたら丁度よかった」→ 厚手のブランド品を買う目安になる。
- 「カカトにパッドを貼ったら脱げなくなった」→ カカト調整に特化した製品を探せばいいと分かる。
もちろん、100均のインソールで十分に満足できれば、それが最もコストパフォーマンスの良い解決策になります。まずは100円(税抜)で色々なパターンを試し、自分の足と靴に最適な「厚み」と「調整箇所」を探り当ててみてください。
かかと用パッドで滑り止めをする効果
100円ショップのフットケアコーナーで必ず目にするのが、カカトの内側(腰裏)に貼り付けるタイプの「かかと用パッド」です。通常は靴擦れ防止のために使われるアイテムですが、サイズ調整においても「隙間埋め」と「滑り止め」の二役をこなす便利なグッズです。
1. 本来の使い方:カカトの隙間を物理的に埋める
最もスタンダードな使い方は、スニーカーのカカトの内側カーブに合わせて貼り付ける方法です。これにより、以下の効果が期待できます。
- 隙間の解消: パッドの厚み(通常2mm〜5mm程度)の分だけ、靴の前後長が短くなり、フィット感が増します。
- 摩擦力の向上: クッション素材やスエード調の素材がカカトに引っかかりを作り、歩行時にカカトが抜けるのを防ぎます。
剥がれやすさに注意 この使い方の最大の弱点は、靴を履く際に足を入れる圧力でパッドがめくれて剥がれやすいことです。これを防ぐためには、指でパッドを押さえながら足を入れるか、必ず「靴べら」を使って履く習慣をつける必要があります。
2. プロ級の裏技:タンパッドとして流用する

実は、この「かかと用パッド」には、多くのスニーカー好きが実践している「裏技」が存在します。それは、カカトではなく「シュータン(ベロ)の裏側」に貼り付けて、簡易的なタンパッドとして使うという方法です。
前の章で解説した「タンパッド」は、専用品だと意外と高価だったり、売っている店が少なかったりします。しかし、100均の「かかと用パッド」を使えば、わずか110円で同様の効果を得ることができます。
【実践手順】
- アイテム選び: ダイソーなどで売っている、できるだけ「厚みのある」「低反発クッションタイプ」のかかとパッドを選びます。ジェルタイプよりも布製クッションの方が蒸れにくくおすすめです。
- 位置決め: スニーカーの紐を緩めてベロをめくり、足の甲が当たる位置(紐を結んだ時に一番圧がかかる場所)を確認します。
- 貼り付け: ベロの裏側にパッドを貼ります。
- 補強(重要): 100均パッドの粘着テープは弱いことが多いので、布用の強力両面テープなどで補強してから貼ると、耐久性が格段に上がります。
なぜカカトに貼るより効果的なのか? ベロの裏側は、足を入れる時に摩擦が起きにくい場所なので、カカトに貼るよりも圧倒的に剥がれにくいのです。さらに、上から甲を押さえつけることで、結果的にカカトがヒールカップに密着するため、カカトに貼るよりも自然な履き心地でサイズ調整ができます。
「1cm大きいけれど、インソールを入れると窮屈すぎる」という微妙なサイズ感の時には、まずはこの「かかとパッドのタン裏貼り」を試してみてください。見た目を変えずにフィット感を向上させる、非常にスマートな解決策になります。
スニーカーが1cm大きい時の調整手順まとめ
最後に、スニーカーが1cm大きいと感じた時の最適な調整フローをまとめます。いきなりアイテムを買うのではなく、以下の順序で試していくと、無駄なく快適なフィット感を手に入れられるはずです。
| 手順1:確認 | カカトを合わせて紐をしっかり結び、つま先の余裕が1cm程度なら「正解サイズ」の可能性あり。まずは紐を締め直してみる。 |
|---|---|
| 手順2:紐調整 | お金をかけずに「ヒールロック」結びを試す。これでカカトの浮きが解消されれば解決。 |
| 手順3:部分調整 | それでも甲が浮くなら、ダイソー等の「かかとパッド」などをタン(ベロ)の裏に貼る(タンパッド化)。 |
| 手順4:全体調整 | それでも緩い場合は、厚手のインソールを入れて底上げする。 |

この手順で調整を行えば、1cm大きいスニーカーでも驚くほど歩きやすくなるはずです。お気に入りの一足を諦めずに、ぜひご自身の足に合うようにカスタマイズして楽しんでくださいね。
※本記事で紹介した方法は一般的な調整例です。足の形状には個人差がありますので、痛みを感じる場合は無理をせず専門家にご相談ください。

