コンバースのスニーカー、特にオールスターはそのタイムレスなデザインで世界中の人々に愛され続けています。しかし、多くの愛用者が共通して直面する悩み、それが「タン(ベロ)がずれてしまう」問題です。歩行中にタンが徐々に内側や外側へと滑り落ちてしまうこの現象は、単に見た目のバランスを崩すだけでなく、タンの端が足首に当たって不快感や痛みを引き起こす原因にもなります。
この記事では、まず、なぜタンはずれる?構造的な原因を深く掘り下げつつ、コストをかけずに今すぐ試せる靴紐の通し方「オーバーラップ」という基本テクニックや、より強力に固定できるイアンノットで結び方を改善する方法を詳しく解説します。さらに、靴紐の通し方を応用した「シュータンアンカー」といったテクニックや、その他のベロがずれない結び方のコツも紹介します。
また、対策は靴紐だけではありません。専用グッズ「シュータンパッド」の効果や、「シュータンクリップ」という選択肢、そして脱ぎ履きの快適さまでも向上させる「ゴム紐」への交換もおすすめである理由を詳しく見ていきましょう。100均グッズを使った加工(DIY)による手軽なカスタマイズ方法から、最終手段「タンループ」を縫い付けるといった本格的な改造、そして購入時に失敗しないためのタンずれしないモデルを選ぶための重要なポイントまで、コンバースのタンずれに関するあらゆる防止策を網羅的にお届けします。
- タンがずれる構造的な理由と個人の足型の関係性
- 靴紐の通し方や結び方を変えるだけですぐに試せる対策
- 専用グッズやゴム紐を使った手軽で効果的な改善方法
- DIYによる根本的な加工やタンずれしにくいモデルの選び方
コンバース タンずれ 防止の基本:原因と靴紐対策

- なぜタンはずれる?構造的な原因
- 靴紐の通し方「オーバーラップ」
- イアンノットなどベロがずれない結び方のコツ
- 靴紐で固定「シュータンアンカー」
なぜタンはずれる?構造的な原因
コンバース、特に「オールスター」モデルでタンずれが頻繁に起こるのには、その100年以上にわたるクラシックなデザインに由来する、いくつかの構造的な原因が深く関わっています。
第一の、そして最大の理由は、多くのモデルでタン(ベロ)の中央に靴紐を通すための「タンループ(シューレースループ)」が設けられていないことです。現代の多くの高機能スニーカーは、このループに靴紐を通すことでタンを中央に物理的に固定しています。しかし、コンバースのコアモデルは20世紀初頭のバスケットボールシューズとしての原型デザインを色濃く残しており、そのアイコニックなシルエットを維持するために、あえてこの機構を採用していない場合が多いのです。
第二の理由は、タン自体の素材と構造です。オールスターのタンは、アッパー(甲を覆う部分)と同じキャンバス生地一枚で、あるいは薄いスポンジ材を挟んだだけのごくシンプルな構造で作られています。この薄く柔らかい素材特性が、歩行時の摩擦や足の屈曲運動によってタンが型崩れしやすく、左右どちらかに倒れやすいという傾向を生み出しています。
個人の足型や歩き方も影響
スニーカー自体の構造的要因に加え、個人の足の形状や歩行の癖もタンずれに大きく影響します。例えば、足の甲が高い(ハイアーチ)方や足幅が広い方の場合、足の甲の丸みが「坂」のように機能し、タンがその坂を滑り落ちるように片側へ倒れやすくなります。
また、歩行時に足が内側に倒れやすい(回内足)、あるいは外側に体重がかかりやすい(回外足)といった歩行の癖も、タンを一定方向へ押し出す力として作用します。足と靴のフィット感が低下すると、こうした問題はさらに顕著になります。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、足に合わない靴が様々な足のトラブルの原因になる可能性が指摘されており、タンずれもその一つと言えるでしょう。
このように、コンバースのタンずれは「クラシックなデザイン特性」と「個人の身体的特徴」が組み合わさることで発生する、非常に一般的かつ構造的な現象なのです。
靴紐の通し方「オーバーラップ」

タンずれ対策として、最も手軽でコストゼロ、かつ効果を実感しやすい基本の対策が、靴紐の通し方を「オーバーラップ」に変更することです。これはコンバース公式サイトでも推奨されることがある、基本的なレーシング方法です。
多くの人が無意識に行いがちなのは「アンダーラップ」(紐がハトメ穴の下から上へ通る)ですが、これでは紐がアッパーの内側に隠れる部分が多くなり、タンを直接押さえつける力が弱くなります。
一方、「オーバーラップ」は靴紐が常にハトメ穴の「上から下へ」通るのが特徴です。この通し方には、タンずれ防止において非常に明確なメリットがあります。
オーバーラップがタンずれを防ぐ理由
オーバーラップで紐を通すと、アッパーの外側(表面)を横切る靴紐の面積が最大化されます。この「外側を通る紐」が、タン全体を上から「面」で強く押さえつける力(=摩擦力)として機能します。アンダーラップが「点」で支えるイメージなら、オーバーラップは「面」で押さえるイメージです。
この圧力によってタンとアッパーとの摩擦力が増大し、タンが左右に動くための「遊び(隙間)」が最小限に抑えられるため、歩行中でもタンが中央に留まりやすくなるのです。
オーバーラップの基本的な手順
手順は非常にシンプルです。
- まず、つま先側に最も近い左右のハトメ(穴)に、靴紐を「上から下へ」と通します。スニーカーの内側に出てきた左右の靴紐の長さを均等に揃えてください。
- 次に、片側の紐(例:外側)を、反対側(内側)の2番目のハトメに「上から下へ」と通します。(紐はアッパーの外側を斜めに横切る形になります)
- もう片側の紐(内側)も同様に、反対側(外側)の2番目のハトメに「上から下へ」と通します。
- この作業(常に「上から下へ」)を、一番上のハトメまで交互に繰り返します。
たったこれだけの作業で、タンへの押さえが格段に強まるのが実感できるはずです。まだ試したことがない方は、まずこの「オーバーラップ」から実践してみることを強くおすすめします。
イアンノットなどベロがずれない結び方のコツ

靴紐の通し方を「オーバーラップ」にしても、結び目自体が歩行中に緩んでしまっては、タンを押さえる圧力も失われ効果が半減してしまいます。タンずれを防ぐとは、タンへの「圧力」を持続させることでもあります。
そこで重要になるのが、「緩みにくい結び方」を実践することです。その代表格として世界的に知られているのが「イアンノット(Ian Knot)」、そしてその進化版であるさらに強力な「イアンセキュアノット(Ian’s Secure Knot)」です。
イアンセキュアノットの結び方
イアンセキュアノットは、一度締めると強い張力がかかっても非常に緩みにくいため、タンへの圧力を一日中キープするのに最適です。手順は少し独特ですが、習得する価値は絶大です。
- まずは通常通り、ひと結びします。(例:右の紐を左の紐の上に重ねてひと結び)
- 左右の紐で、それぞれ輪(ループ)を作ります。
- 左の輪を、右の輪の上に重ねて交差させます。
- 【重要】上に重ねた「左の輪」を、根元の隙間に向こうから手前に通します。
- 【重要】同時に、下になった「右の輪」を、根元の隙間に手前から向こうに通します。(二つの輪が互いの隙間を逆方向に通過するイメージです)
- 左右の輪の先端をしっかり掴み、強く引き締めて完成です。結び目が縦に固く締まります。
この結び方は最初は練習が必要ですが、マスターすればタンずれ防止だけでなく、あらゆる靴で靴紐がほどけるストレスから解放されます。
その他のベロがずれない結び方のコツ
イアンノットが難しい場合や、さらに固定力を高めたい場合、以下の点も意識してみてください。
- ハイカットは一番上の穴まで通す:ハイカットスニーカーの場合、面倒でも一番上のハトメ(足首の最も上の穴)までしっかりと紐を通すことが重要です。これにより足首周りのホールド感が格段に高まり、アッパー全体が安定するため、結果としてタンも固定されやすくなります。
- 適度な力で均等に締める:緩すぎは問題外ですが、逆にタンずれを恐れて強く締めすぎると、足の甲が圧迫されて血流が悪くなったり、タンが不自然によれてしまったりする原因にもなります。つま先側から順番に、均等な力で、足が痛くならない適度なフィット感を目指しましょう。
靴紐で固定「シュータンアンカー」
「オーバーラップ」や「イアンノット」といった基本的な対策を試しても、ご自身の足型や歩き方の癖によっては、まだタンずれが収まらない場合があります。そのような場合に試したいのが、靴紐自体でタンを物理的に固定する「シュータンアンカー」と呼ばれる非公式なテクニックです。
これは、タンループがないコンバースにおいて、靴紐でタンループの代わりを擬似的に作り出す応用的なアイデアです。
シュータンアンカーの手順
方法はいくつかバリエーションがありますが、最も一般的で簡単な例をご紹介します。
- 靴紐を、タンが最もずれやすいと感じる高さ(通常は足首が曲がる中央部、上から3〜4番目のハトメあたり)まで、オーバーラップで通します。
- 次のハトメに移る際(例:左のハトメから右のハトメへ渡す時)、靴紐を反対側に渡す直前に、その靴紐を一度「タンの真下」にくぐらせます。
- (具体例:左のハトメから内側に出てきた紐を、そのまま右のハトメに通すのではなく、一度タンの裏側をぐるりと通過させてから、右のハトメに「上から下へ」通します)
- タンの裏側を通過した紐が、タンを物理的に「アンカー(錨)」のように中央に固定します。
コンバースのモデルによっては、タンの裏側にブランドタグやサイズ表記のタグが縫い付けられている場合があります。そのタグの両端が縫われておらず、隙間がある場合は、そこをタンループの代わりとして靴紐を通す「裏技」も存在します。
この方法は、タンを靴紐で物理的に「縛る」形になるため、固定力は絶大です。タンずれはほぼ確実に解消されるでしょう。
シュータンアンカーの注意点
非常に効果的な方法ですが、明確なデメリットも存在します。最大の注意点は、紐がタンの裏側(足の甲)を通るため、人によっては足の甲に紐が当たる圧迫感や違和感を覚える可能性があることです。
特に甲高の方や、紐をきつく締めすぎた場合にこの違和感が出やすくなります。また、見た目も少し特殊になるため、まずは圧迫感がないか短時間試してみることをおすすめします。
コンバース タンずれ 防止の応用:グッズとDIY

- 専用グッズ「シュータンパッド」の効果
- 「シュータンクリップ」という選択肢
- 「ゴム紐」への交換もおすすめ
- 100均グッズを使った加工(DIY)
- 最終手段「タンループ」を縫い付ける
- タンずれしないモデルを選ぶ
専用グッズ「シュータンパッド」の効果

靴紐の工夫だけではタンずれが解決しない場合や、より手軽に対策したい場合、市販されている専用グッズの活用が非常に有効です。その中でも、まず試してみたいのが「シュータンパッド」です。
シュータンパッドは、本来はローファーや革靴などのサイズが微妙に大きい場合の「サイズ微調整」や、靴の甲(アッパー)が足の甲に当たって痛むのを防ぐ「クッション材」として販売されている製品です。これをタンずれ防止に応用します。
シュータンパッドの仕組みと使い方
使い方は非常に簡単です。多くの製品はクッション性のある素材(スポンジや低反発ウレタンなど)の裏が粘着テープになっており、それをタンの裏側(足の甲に直接当たる側)に貼り付けるだけです。
貼り付ける位置は、タンずれが最も起こりやすい中央部から上部にかけてが効果的です。
これにより、タン自体に物理的な「厚み」と、パッドの素材による「摩擦」が加わります。この厚みが足の甲とアッパー(靴本体)の間の「隙間」を物理的に埋め、アッパーと足の甲でタンを「サンドイッチ」するように挟み込む状態を作り出します。
結果として、タンが左右に動くための余地(遊び)がなくなり、摩擦力も増すことで、ずれが防止されるという仕組みです。
シュータンパッドのメリット
- フィット感の劇的な向上:特に足の甲が薄い(低い)ために、コンバースを履くと甲周りに隙間ができてフィット感が緩いと感じている人には、サイズ調整とタンずれ防止を兼ねるため非常に有効です。
- クッション性による快適さ:足の甲への当たりが柔らかくなり、長時間歩行時の疲労軽減や、硬いタンの端が当たる痛みの解消にも効果が期待できます。
- 外観を損ねない:タンの裏側に貼るため、スニーカーの外観を一切損ねません。
シュータンパッドのデメリット
- 圧迫感のリスク:もともと甲周りがきつい靴、あるいは甲高の方が使用すると、パッドの厚みのぶん、逆に圧迫感が強くなってしまう可能性があります。
- 粘着力の限界:貼り付けタイプであるため、汗や湿気、長期間の使用によって粘着テープが剥がれてくる可能性があります。貼り付ける際は、タン裏のホコリや汚れをきれいに拭き取ってから圧着させると長持ちします。
「シュータンクリップ」という選択肢
より直接的、かつ強力にタンずれを解決するために設計されたアイテムが「シュータンクリップ(またはシュータンホルダー)」です。
これは、後付けで「タンループ」の機能を強制的(物理的)に実現するためのアイディア商品です。多くはプラスチック製や金属製のクリップ状のパーツで、これをタンの中央に挟み込むように装着します。
そして、靴ひもを通す際に、そのクリップの上、あるいはクリップ自体に設けられたスリット(穴や溝)を靴紐が通過するようにセッティングします。
シュータンクリップのメリット
最大のメリットは、靴ひもとタンが物理的に連結されることです。これにより、タンが左右へ動こうとしても靴紐によって中央に引き止められるため、ほぼ完全に動きをブロックすることができます。非常に高い固定力を発揮するのが特徴です。
後述する「タンループを縫い付ける」といったDIY(改造)に抵抗がある人にとって、道具不要で手軽に同等の効果を得られる選択肢となります。
シュータンクリップのデメリット
- 外観への影響:最大の懸念点です。タンの上に物理的な部品(プラスチックや金属)が追加されるため、靴紐の間にクリップが「見える」ことになります。コンバースのクラシックな美学や、シンプルな外観を損なうと感じる方もいるかもしれません。
- 価格:シュータンパッドに比べると、構造が複雑なぶん、価格がやや高価になる傾向があります。
- 破損・紛失のリスク:着脱可能なパーツであるため、着脱時に紛失するリスクや、強い力がかかった場合に破損する可能性もゼロではありません。
固定力を最優先する場合には強力な選択肢ですが、デザイン性と固定力のどちらを優先するかで、評価が分かれるアイテムと言えるでしょう。
「ゴム紐」への交換もおすすめ
「タンずれ防止」と同時に、コンバース最大の悩みとも言える「脱ぎ履きのしにくさ」も一挙に解決したい合理的な方には、「ゴム紐(伸縮するシューレース)」への交換が非常におすすめです。
最近では、一見すると通常のコットン製シューレースと全く見分けがつかないようなデザイン性の高いゴム紐や、結び目自体が不要になるロック機構付きのものなど、多種多様な製品が販売されています。これにより、スニーカーの雰囲気を壊すことなく、利便性を劇的に向上させることが可能です。
ゴム紐がタンずれを防ぐメカニズム
ゴム紐がタンずれを防ぐメカニズムは、その「一定かつ動的なテンション(張力)」にあります。
従来の静的なコットン紐は、一度結ぶとその長さは変わりません。そのため、歩行中に足が屈曲したり、体重移動で足の形がわずかに変わったりすると、一瞬だけ「緩む」タイミング(隙間)が生まれます。この一瞬の緩みが、タンがずれる絶好の機会を与えてしまいます。
一方、動的なゴム紐は、足の動きや形状変化に合わせて常に伸縮します。重要なのは、ゴム紐は常に元の長さに戻ろうと(縮もうと)し続ける点です。この「常時フィット」しようとする力が、歩行中も常にタンを足の甲にやさしく、しかし確実に押し付け続けます。タンが動くために必要な「隙間」や「緩み」が物理的に発生しないため、結果としてタンは中央に固定され続けるのです。
「コンバースを履きたいけれど、玄関で毎回紐を結び直すのが面倒…」と感じている方には、まさに一石二鳥の解決策です。ハイカットモデルでも、まるでスリッポンのように快適に脱ぎ履きできるようになりながら、悩みの種だったタンずれも防止できるため、満足度が非常に高いカスタマイズの一つとして人気を集めています。
ゴム紐の注意点
商品によっては伸縮性が強すぎたり弱すぎたりすることがあります。伸縮性が強すぎるとホールド感が不足し、弱すぎると圧迫感を感じるかもしれません。また、バスケットボールなど、しっかりと足をホールドする必要がある激しいスポーツ用途などには向かない場合もあります。レビューなどを参考に、適度な伸縮性と耐久性のある製品を選ぶことが重要です。
100均グッズを使った加工(DIY)
「専用グッズを買うほどではないけれど、手軽に効果を試してみたい」「コストをかけずに解決したい」という方には、100円ショップで入手可能なグッズを使ったDIY加工も有効な選択肢です。
わずかなコストと手間で、タンずれを物理的に固定する方法がいくつかあります。
方法1:面ファスナー(マジックテープ)固定
粘着テープ式の面ファスナー(マジックテープ)を使い、タンとアッパーを簡易的に固定する方法です。
- まず、ご自身のタンがどちら側(内側か外側)にずれるかを特定します。
- 面ファスナーの硬い方(チクチクするフック側)を、タンの「裏側(足に触れない面)」の、ずれていく方向の端(サイド)に貼り付けます。
- 面ファスナーの柔らかい方(フワフワするループ側)を、上記(2)のフック側が接触するアッパーの「内側(ライニング部分)」に貼り付けます。
- スニーカーを履き、タンを正しい位置に合わせた状態で、面ファスナーを圧着させます。
この方法は、外側から加工の痕跡が一切見えない点が最大のメリットです。ただし、粘着テープの強度は永続的ではありません。汗や湿気、長期間の使用によって剥がれてくる可能性があるため、定期的な貼り替えが必要になる場合があります。また、フック側が靴下に引っかかる可能性も考慮し、できるだけループ側(柔らかい方)が足に触れる側にくるよう工夫すると良いでしょう。
方法2:かかと用パッドの代用
前述の「シュータンパッド」は、100円ショップで販売されている「かかと用低反発パッド」や「靴ずれ防止パッド(ジェルタイプではないもの)」で十分に代用が可能です。これらは本来かかとの隙間を埋めるためのものですが、機能は同じです。適度な大きさにハサミでカットし、タンの裏側に貼り付けることで、同様に隙間を埋める効果が期待できます。
最終手段「タンループ」を縫い付ける

あらゆる対策(靴紐、グッズ)を試しても満足できない場合、あるいは一度の対策で恒久的な解決を望む場合の最終手段が、DIYによる「タンループ」の縫い付けです。
これは、他の多くのスニーカーに標準装備されているタンループを、自ら追加する本格的な改造(カスタム)にあたります。実行には多少の裁縫スキルと道具が必要ですが、成功すればタンずれの悩みから完全に解放されます。方法は大きく分けて2つあります。
方法1:タンに切り込み(スリット)を入れる(非推奨)
最も簡単な方法は、タンの中央にカッターなどで2本の縦の切り込み(スリット)を入れ、簡易的なループとし、そこに靴紐を通す方法です。
- メリット:作業が非常に簡単で、時間もかかりません。
- デメリット:推奨できません。キャンバス生地は一度切り込みを入れると、そこからほつれたり、靴紐の張力によって最悪の場合タン自体が裂けてしまったりする重大なリスクがあります。切り口を縫って補強するか、ほつれ止め液や接着剤で固める処理が必須ですが、それでも耐久性には不安が残ります。
方法2:ループ素材を縫い付ける(推奨)
より安全で確実、かつ美観も保てるのは、リボンや丈夫な布、平ゴムなどをタンに縫い付けて、ループを自作する方法です。ポリエステル製の丈夫な糸(ミシン糸や手縫い糸)と針、ループ素材(幅1cm程度のもの)を用意します。
- タンの中央、上から3番目か4番目のハトメの高さ(靴ひもが通過するのに最適な位置)に印をつけます。
- ループ素材(リボンなど)をタンの「裏側」に配置します。
- タンの表側から針を入れますが、裏側まで完全に貫通させず、タンの表面の生地一枚だけをすくうように縫う「まつり縫い」や「コの字縫い」の技法を用います。(これが難しい場合は、裏側だけで完結するように縫い付けても構いませんが、強度は落ちます)
- これにより、タンの表側には縫い目がほとんど見えない状態で、裏側に強力にループを固定することができます。ループの両端をしっかりと「返し縫い」で補強するのがコツです。
改造(DIY)の注意点
これらの方法は、いずれも靴本体に針や刃物を入れる「改造」にあたります。一度加工すると元に戻すことはできません。また、メーカーや販売店の正規の保証や修理サポートが受けられなくなる可能性が非常に高いです。
実行する場合は、失敗のリスクを十分に理解した上で、あくまで自己責任で行う必要があります。お気に入りの一足や高価な限定モデルで試すのは避け、まずは履き古したもので試してみることをお勧めします。
タンずれしないモデルを選ぶ
これまでは既存のコンバースへの「対処療法」を紹介してきましたが、これから新しいコンバースの購入を検討しているのであれば、「購入時」の選択によってこの問題を根本的に回避することが最も賢明な対策かもしれません。
コンバースの中にも、タンずれ対策が施されたモデルや、構造的にずれにくいモデルが数多く存在します。
タンループが標準装備されたモデル
クラシックラインとは別に、フィット感とパフォーマンスが重要視されるラインの製品には、タンループが標準装備されていることが多くあります。
- CONVERSE SKATEBOARDING(コンバース スケートボーディング):「CONS」などの愛称で知られるスケートラインです。スケート時の激しい動きに対応するため、タンがずれないようタンループが採用されているモデルが一般的です。
- ALL STAR 100(オールスター 100)モデル:コンバース・オールスターの生誕100周年を記念して登場したアップデートモデル群です。(参照:コンバース公式サイト ALL STAR 100)このシリーズの多くは、タンにメモリーフォームを内蔵してフィット感を高めると同時に、タンずれを防ぐためのタンループが追加されています。履き心地も格段に向上しているため、タンずれに悩む方には最適な選択肢の一つです。
ガセットタン(Gusseted Tongue)採用モデル
これは、タンずれを物理的に「不可能」にする、最も確実な構造です。「ガセットタン」とは、タンの両サイドがアッパーの内側(ライニング)と蛇腹状の布で縫合されている構造を指します。
これによりタンがアッパーと一体化しているため、左右に動くことが構造上できません。本来の目的は、靴紐の隙間から水や砂利、ホコリが侵入するのを防ぐ「防水・防塵」のために採用される構造ですが、タンずれ防止にも絶大な効果を発揮します。
具体的には、以下のようなモデルで採用されています。
- GORE-TEX(ゴアテックス)を搭載した防水モデル
- 一部の全天候型(All-Weather / AW)モデル
- ブーツライクなデザインの一部や、特定のアウトドア系コラボレーションモデル
これらのモデルを選べば、タンずれの悩みから100%解放されると言っても過言ではありません。
最適なコンバース タンずれ 防止策を見つける
- コンバースのタンずれは構造的な宿命とも言える
- 多くのモデルでタンループがなくタンが薄いことが原因
- 個人の足型や歩き方の癖も影響する
- まずはコストゼロでできる「オーバーラップ」通しを試す
- オーバーラップはタンを「面」で押さえる効果がある
- 結び目が緩むと効果が半減するため「イアンノット」が有効
- 「シュータンアンカー」は靴紐でタンを固定する強力な技
- ただし足の甲に違和感が出る可能性もある
- 「シュータンパッド」は隙間を埋めてフィット感を向上させる
- 足の甲が薄い人には特に効果的
- 「シュータンクリップ」は後付けでタンループを実現する
- 固定力は高いが外観に影響が出る場合がある
- 「ゴム紐」への交換は脱ぎ履きの快適さとタンずれ防止を両立
- 100均グッズの面ファスナーやパッド代用でDIYも可能
- 最終手段は「タンループ」を自作で縫い付ける改造
- タンに切り込みを入れる方法は破損リスクがあるので注意
- 購入時にタンずれしないモデルを選ぶのが最も確実
- スケートボーディングラインやガセットタン採用モデルがおすすめ


