お気に入りのスニーカーを履こうとしたら、かかとが「グニャッ」と潰れていたり、内側がボロボロに破れていたりして、思わずため息が出た経験はありませんか?
スニーカーのかかと内側の折れや潰れ、そしてその直し方を探している方は、本当に多いと思います。私自身、脱ぎ履きの際にかかとを踏む癖があって、大事なスニーカーの芯を折ってしまった苦い経験があります。プラスチックが割れたりすると、見た目が悪いだけでなく、履き心地も最悪ですよね。
特に内側の破れは厄介です。放置してしまうと、中のスポンジが摩耗してえぐれてしまい、歩くたびに痛みが出たり、かかとが浮く状態が続いて、さらにトラブルが悪化する悪循環に陥りがちです。
この記事では、潰れたかかとのシワをアイロンやドライヤーで復元する方法から、100均(ダイソーやセリア)のアイテムを活用した簡単な破れ補修テクニック、そして最も重要な「かかとが浮く」状態への対策まで、私がこれまでに調べたり、実際に試したりした情報を詳しくまとめてみました。
- かかとが折れたり破れたりする根本的な原因と放置するリスク
- DIYで可能な、潰れやシワの形状を復元する方法
- 100均アイテム(ダイソー・セリア)を使った内側の破れ修理
- スニーカーの寿命を延ばす、正しい履き方と予防策
スニーカーかかと内側の折れ、直し方:原因と潰れ
スニーカーのかかとトラブルは、突然起こるわけではありません。日々の小さな習慣が積み重なって、大きなダメージにつながっています。まずは、なぜかかとが折れたり潰れたりするのか、そのメカニズムと原因をしっかり見ていきましょう。ここを理解することが、適切な直し方と予防への第一歩です。
かかとを踏む癖が折れの主な原因
スニーカーのかかとを潰してしまう最大の原因は、やはり「かかとを踏む習慣」、これに尽きると私は思います。
急いでいる時や、靴紐を結んだまま無理やり足を入れようとするとき、無意識にかかとを踏んでいませんか?
スニーカーのかかと部分には、靴の形状を保ち、足を安定させるために「カウンター」または「月型(つきがた)」と呼ばれる、非常に硬い芯材(主にプラスチックや硬化させた革など)が入っています。これは、かかとを包み込むように配置され、歩行時のブレを防ぐ重要なパーツです。(参考:スニーカーの各部の名称 | 知っておきたい靴のこと | 靴について – MoonStar)
かかとを踏むという行為は、この大切なカウンターに体重をかけて、力ずくで折り曲げているのと同じです。これが繰り返されると、硬い芯材も耐えきれず、変形したり、やがては「パキッ」と折損・割れたりしてしまいます。
【警告】かかとを踏むのは絶対にNG
かかとを踏むのは、スニーカーの骨格を自ら破壊する行為であり、寿命を著しく縮めます。一度芯が折れてしまうと、DIYでの完全な修復はほぼ不可能になり、専門の修理が必要になるか、最悪の場合、履けなくなってしまいます。
潰れたかかとのシワをアイロンで

芯(カウンター)が完全に折れてはいないけれど、潰れて深いシワがついてしまった…という初期段階であれば、熱を利用してある程度まで形状を復元できる可能性があります。特に天然皮革(本革)のレザースニーカーには有効な方法かもしれません。
アイロンを使ったシワ伸ばし手順
- 形状の固定:まず、スニーカーの内部にシューキーパー(シューツリー)をしっかり入れ、かかとの形を内側から整えます。これが無いと熱を加えても形が戻りません。
- 当て布の準備:シワになっている部分に、水で湿らせて固く絞った当て布(清潔なタオルやクロス)を置きます。ビショビショだとシミの原因になるので注意してください。
- 熱処理:アイロンを「低温」設定(スチームはOFF)にします。当て布の上から、アイロンを強く押し付けず、1回10秒程度、優しく滑らせるか、軽く圧をかける程度にします。
- 確認と冷却:一度当て布を外し、シワの状態を確認します。まだシワが残っていても、必ず一度冷ましてから再度試してください。熱いまま連続で当てると革を痛めます。
熱を加えた後のレザーは水分が飛んで乾燥しやすくなっています。そのまま放置すると、ひび割れや劣化の原因になりかねません。
完全に冷めた後、デリケートクリームやコンディショナーでしっかりと保湿ケアを行うことが非常に重要です。これで革の柔軟性が戻り、シワが伸びた状態が定着しやすくなります。
【素材の確認は必須】 この方法は、天然皮革だからこそできるリカバリー方法です。合成皮革(合皮)やメッシュ、ナイロン素材は熱に非常に弱いため、アイロンを当てると溶けたり縮んだりする危険性が高いです。これらの素材には、次に紹介するドライヤー法を慎重に試すか、基本的には熱を加える修理は避けるべきだと私は思います。
ドライヤーでの形状復元と注意点

アイロンよりも手軽で、より細かく温度調節がしやすいのがドライヤーを使う方法です。アイロンのような「直接圧力をかける」工程がないため、熱にデリケートな合成皮革(合皮)など、アイロンが使えない素材にも(慎重に行えば)試せる可能性があります。
ただし、「手軽=リスクが低い」というわけでは決してありません。むしろ、熱風を当てる時間や距離を間違えると一瞬で素材を痛めてしまうため、アイロン以上に慎重さが必要だと私は思います。
1. 準備:かかとを内側から「型」で固定する
まず、アイロンの時と同様に、スニーカーの内部にシューキーパー(シューツリー)をしっかりと挿入します。これが形状を復元するための「型」になります。
かかと部分が潰れている場合、シューキーパーが奥まで入りきらないことがありますが、ここで妥協せず、かかとの丸みにピッタリ合うように、手で形を整えながら奥までしっかり押し込んでください。シューキーパーが小さい場合は、つま先側に丸めた新聞紙などを詰めて、シューキーパー自体をかかと側に強く押し付けるように固定するのも有効です。
2. 熱の加え方と「距離と設定」が最重要
次にドライヤーを準備します。設定は必ず「弱温風(LOW)」または「送風(COOL)」にしてください。絶対に「強温風(HIGH/TURBO)」は使わないでください。
そして、スニーカーから必ず20〜25cmほどの距離を保ちます。これは絶対に守ってください。近すぎると、弱温風でも素材が耐えられない熱量になってしまいます。
髪を乾かすときのようにドライヤーを常に振りながら、かかと全体(シワの部分だけでなく、その周辺も含めて)を均一に温めていきます。一箇所に集中して当てず、全体が「ほんのり温かいかな?」と感じる程度まで、15〜20秒ほど当てる→様子を見る、を繰り返します。
3. 整形:熱が冷める瞬間に形を整える
素材がほんのり温まり、少し柔らかくなった(しなやかになった)と感じたら、すぐにドライヤーを止めます。そして、熱が冷めないうちに、指で優しくシワを伸ばすように擦ったり、靴の内側(シューキーパー)から指で強く押し出して、外側から形を整えたりします。
【重要】本当の勝負は「冷却」です 熱で柔らかくなった素材は、「冷める瞬間」にその形が固定(セット)されます。
ですから、シワを伸ばした状態をキープしたまま、ドライヤーの「冷風(送風)」機能を使って一気に冷やしてください。冷風機能がない場合は、そのまま手で形を固定したまま、自然に熱が冷めるまで待ちます。
触ってみて、完全に常温に戻っていればOKです。まだシワが残っている場合は、焦らずこの工程を2〜3回繰り返します。
素材別の注意点(最重要)
- 合成皮革(合皮・フェイクレザー): 高温は「致命的」です。表面が水ぶくれのようにプクッと浮いたり、縮んだり、安っぽいツヤが出たりするリスクが非常に高いです。まずは「冷風(送風)」で形を整えることから試し、それでもダメなら「弱温風(LOW)」を、必ず25cm以上離して、ほんの数秒当てる程度に留めてください。少しでも異変を感じたら即座に中止してください。
- メッシュ・ナイロン素材: これらも化学繊維なので、熱で溶けたり、縮んだり、硬化したりする可能性があります。私は「冷風(送風)」のみの使用を強く推奨します。温風は避けるのが無難です。
- スエード・ヌバック素材: 基本的に温風は厳禁です。熱を加えると革の油分が飛んでしまい、カチカチに硬化したり、起毛が寝て元に戻らなくなったりします。もし試すとしても「冷風(送風)」のみにしてください。
【重要】あくまで自己責任の範囲で
アイロンと同様、ドライヤーの熱を利用する方法は、素材を修復不可能なほど痛めてしまうリスクを伴います。これは「魔法の修復術」ではなく、あくまで「最終手段の一つ」だと考えてください。
もう履けなくなることを覚悟の上で試す、というなら止めませんが、高価なスニーカーや限定モデル、思い入れのある一足で試すのは絶対にやめましょう。
そういった大切な靴は、迷わずプロの修理専門店にご相談ください。DIYでの修理は、かえって状態を悪化させ、プロでも修理不可能な状態にしてしまう可能性があることを、どうか忘れないでくださいね。
芯のプラスチックが割れた時のリスク
もし、かかとを踏み続けた結果、芯材のプラスチックが「パキッ」と音を立てて割れてしまったら、それは単なるシワや潰れとは全く異なる、非常に危険な状態です。
1. 痛みと怪我の直接的な原因に
割れたプラスチックの破片は、カッターナイフのように非常に鋭利になることがあります。これが内側の生地(内張り)を突き破って、歩くたびにアキレス腱やくるぶしに直接突き刺さるようになります。
「なんかチクチク痛いな」というレベルではなく、ひどい靴擦れや、場合によっては出血を伴う怪我につながる恐れがあり、非常に危険です。
2. 靴の機能性(ホールド力)の喪失
カウンターの最も重要な役割は、かかとを固定し、歩行時の安定性を高めることです。その芯が割れたり折れたりするということは、靴の骨格が破壊された状態です。
ホールド力が著しく低下し、歩行時のバランスが悪化するだけでなく、足が靴の中で余計に動くため、他の部分(スポンジの摩耗など)のダメージも加速させてしまいます。
スポンジ摩耗と放置の危険性
かかと内側のトラブルは、芯の折れだけではありません。内張りの生地や、その下にあるスポンジが摩耗して破れる(穴が開く)ケースも非常に多いです。
原因は「摩擦」
この主な原因は、靴と足の「摩擦」です。特に、以下のような場合に起こりやすいです。
- サイズが大きすぎる:かかとが浮く(パカパカする)ため、歩くたびに内側が擦れます。
- サイズが小さすぎる:常にかかとが強く圧迫され、生地が擦り切れやすくなります。
- 靴紐が緩い:靴の中で足が固定されず、前後左右に動くため、摩擦が激しくなります。
最近は通販での購入も増え、試着なしで買うことも多いと思いますが、わずかなサイズ不適合が、こうした内側の摩耗を早める原因になっているかもしれません。
放置した場合のリスク
小さな破れを「まだ大丈夫」と放置すると、穴はどんどん広がっていきます。内側のスポンジがえぐれるように削れていき、クッション性が失われます。
そして最悪なのが、先ほどの「芯の割れ」と「スポンジの摩耗」が同時に起こっているケースです。スポンジというクッションがなくなることで、割れた芯がよりダイレクトに足に当たるようになり、非常に危険な状態となります。
幸い、生地の破れやスポンジの摩耗だけであれば、穴が小さいうちならDIY修理で十分対応できることが多いです。手遅れになる前に、早めに対処しましょう。
スニーカーかかと内側の折れ、直し方:破れ修理と予防
かかとが潰れる原因やリスクがわかったところで、次は具体的な「直し方」です。特にダメージが出やすい「内側の破れ」に焦点を当てたDIY修理方法と、そもそもこうしたトラブルを起こさないための最も重要な「予防策」について、詳しく見ていきましょう。
自分で修理。100均の補修シート活用

かかと内側の生地(ライニング)が擦り切れて破れてしまった場合、DIY(自分で修理)で比較的簡単に、しかも安価に直すことができます。その主役が、100均ショップ(ダイソー、セリアなど)で手に入る「補修シート」です。
私が試した基本的な手順はこんな感じです。
かかと内側の破れ DIY修理手順
- 清掃と下地処理: まず、破れた部分の汚れやホコリ、毛玉などをきれいに拭き取ります。ここで手を抜くと接着力が格段に落ちます。可能であれば、靴用のクリーナーなどで油分も取っておくと万全です。
- シートのカット: 補修シート(フェイクレザーシートやジャージ素材の補修布など)を、破れた穴よりも「一回り以上大きく」カットします。角を丸く切っておくと、剥がれにくくなるのでおすすめです。
- 貼り付け: シールタイプの場合は、空気が入らないよう慎重に貼り付けます。粘着タイプでない場合は、布用の強力接着剤をシート側と靴側の両方に薄く塗り、少し乾かしてから圧着します。
- 圧着と乾燥(最重要): 貼り付けた後が肝心です。靴の中に丸めたタオルや新聞紙をパンパンに詰め込み、内側から補修シートを強く押し付ける状態にします。そのまま一晩(接着剤の説明書に従う)しっかりと乾燥・圧着させることで、耐久性が格段に上がります。
芯が割れている場合の応急処置
もし、内張りを修理する際に「芯のプラスチックが割れて尖っている」のを発見した場合、必ずその破片を先に取り除くか、危険がないように処理してください。
尖った部分をニッパーでカットしたり、ヤスリで丸めたりした後、その上から厚紙やクラフトレザーなどで「土台」を作ってから補修シートを貼ると、足への当たりが軽減できる場合があります。ただし、これはあくまで応急処置なので、根本的な解決にはプロの修理が必要かもしれません。
ダイソー・セリアで揃う修理道具
「自分で修理」というとハードルが高そうですが、最近は100均(ダイソーやセリアなど)のDIY・リペアコーナーが充実しており、ほとんどの道具が揃います。
私が修理コーナーでよく見かけるのは、以下のようなアイテムです。
| アイテム名 | 特徴・用途 |
|---|---|
| フェイクレザーシート(シールタイプ) | 最も手軽。色(黒、白、茶など)も豊富で、スニーカーの内張りに近い質感のものを選べます。 |
| 布用強力接着剤 | シールタイプでない補修布を使う場合や、剥がれやすい箇所の補強に必須。速乾性より耐久性重視で選ぶのが良いかなと思います。 |
| 補修パッチシール(デニム用など) | ジャージ素材や布製のライニングの場合、こちらの方が馴染むこともあります。アイロン接着タイプは使えないので注意。 |
| (補足)靴用のヤスリ | 破れた部分の毛羽立ちを整えたり、芯の尖りを丸めたりするのに使えます。 |
これらがあれば、材料費は文字通り数百円で済みます。手軽に試せるのが最大のメリットですね。
【専用品との違い】 100均のアイテムは非常に便利ですが、やはり靴専用の修理用品(例えば「すべり革」として売られている専用パッチなど)と比較すると、耐久性や摩擦への強度は劣る場合があります。あくまで応急処置的な側面もあるため、仕上がりの綺麗さや長期的な耐久性を求めるなら、専用品やプロ修理の検討も有効だと思います。
プロの修理代と依頼の目安
DIYでは対応しきれない「芯材(カウンター)の大きな折損・割れ」や「広範囲の破れ・スポンジの欠損」は、スニーカー修理や靴修理の専門店に相談するのが一番です。
プロは「交換・再形成」を行う
プロにお願いすると、DIYのような「上から貼る」補修ではなく、根本的な修理をしてもらえます。
- 内張り生地(すべり革)の交換: 破れた部分だけではなく、かかと全体の古い内張りを一度剥がし、新しいレザーや耐久性のある生地に張り替えます。
- 芯材(カウンター)の再形成・交換: 折れたり割れたりした芯材を、専用の素材(テルモ、ポリテックスといった熱可塑性樹脂など)で再形成したり、新しい芯に入れ替えたりします。
仕上がりは、さすがプロ!というレベルで、見た目はもちろん、かかとのホールド力(履き心地)もかなり回復します。
【費用の目安】 お店や修理内容、スニーカーの構造によって大きく異なりますが、かかと内側の補修(内張り張り替え)で、片足あたり 2,500円〜4,000円程度が一般的な目安かなと思います。(※両足だとこの倍額になることが多いです)
芯材の交換まで行う場合は、さらに高額になる可能性があります。
費用はあくまで目安です。必ず修理を依頼する前に複数の店舗で見積もりを取り、正確な料金と修理内容を確認してから依頼するようにしてください。最終的な判断は、信頼できる専門家にご相談されることを強くおすすめします。
プロに頼むべきケース
- 芯材(プラスチック)が完全に割れて、履くと痛みがある場合
- スポンジが広範囲にえぐれて欠損している場合
- 限定モデルや高価なスニーカーで、絶対に失敗したくない場合
- DIY(自分で修理)に自信がない、または仕上がりの綺麗さを求める場合
大切な一足や、深刻なダメージの場合は、迷わずプロに任せるのが安心ですね。
かかとが浮くならヒールグリップ
そもそも、かかと内側が破れる最大の原因の一つが、歩くたびに「かかとが浮く(パカパカする)」ことです。
サイズが少し大きかったり、自分の足の形と靴の相性が悪かったりすると、歩行時にかかとが靴の中で上下してしまい、そのたびに内側が擦れて摩耗してしまいます。
そんな時は、「ヒールグリップ(かかとパッド)」が非常におすすめです。これは、かかとの内側(アキレス腱が当たる部分)に貼り付けるクッション材で、靴と足の隙間を物理的に埋めてくれます。
ヒールグリップの主な効果
- フィット感の向上:隙間を埋めて、かかとをしっかりホールドします。
- 摩擦の軽減:かかとの浮き(パカパカ)を抑えることで、内側の摩耗を劇的に減らします。
- 靴擦れの防止:クッションが足への当たりを和らげ、靴擦れ予防にもなります。
ジェルタイプやスポンジタイプ、表面がスエード調のものなど色々種類があります。数百円から手に入るので、破れの予防策として、新品のスニーカーに貼っておくのも賢い使い方だと私は思います。
インソールと靴べらで予防する

かかとを守るための予防策として、ヒールグリップと並んで私が特に重要だと思うのが、「インソールでの調整」と「靴べらの使用」です。
インソールの活用
ヒールグリップだけではかかとの浮きが改善しない場合、全体的に靴が大きい可能性があります。その場合は、元々入っているインソールの下にもう一枚薄いインソールを追加したり、厚みのあるインソールに交換したりするのも有効です。
これにより足の甲の位置が高くなり、靴紐によるホールド感が増すため、靴内部での足のズレ(=かかとの摩擦)を防ぐことができます。
靴べら(シューホーン)の使用
そして、これが最も簡単で、最も効果的な予防策かもしれません。
「靴を履くときは、必ず靴べら(シューホーン)を使う」
たったこれだけです。靴べらを使うことで、足が滑らかに靴の中に入り、かかとの芯(カウンター)に一切の負担をかけません。あのかかとを潰す「グニャッ」という嫌な感触と、それに伴う罪悪感を完全に防ぐことができます。
「面倒くさい」と感じるかもしれませんが、玄関に一つ置いておくだけです。この数十秒の手間を惜しむかどうかで、スニーカーの寿命は本当に大きく変わってくると思います。
靴紐を緩いまま履くのはNG
「靴べらを使う」ことと並んで、スニーカーの寿命、特にかかと内側の健康状態を左右するのが「靴紐」の扱いです。
かかとを踏んでしまう癖がある人の多くが、実はこの「靴紐を緩いままにしている」という共通点を持っている、と私は感じています。
靴紐を緩めたままだと、脱ぎ履きは一見楽そうに見えます。しかし、実際には履くときに足がスムーズに入らず、タン(ベロ)が靴の中に落ち込んだり、入り口が狭いままで足が引っかかったりしがちです。その結果、どうなるか。
指や靴べらを使うのが面倒になり、結局「かかと部分を指で引っ張る」または「かかとを潰して」足を無理やり押し込むことになります。これが、「かかとを踏む癖」を助長し、カウンター(芯材)を破壊する悪循環の入り口です。
歩行中もダメージは蓄積する
さらに、緩い靴紐は歩行中も深刻な問題を引き起こします。
それは、靴の中で足が自由に動ける状態を作ってしまうことです。本来スニーカーは、靴紐を締めることで足を靴底に固定し、一体化させるものです。しかし、靴紐が緩いと、歩くたびに(特に蹴り出す瞬間に)足が靴の中で前後にズレ、かかとが浮き(パカパカし)、アキレス腱周辺が靴の内側に激しく擦れ続けます。
この小さな、しかし継続的な摩擦こそが、内張りの生地を擦り切れさせ、中のスポンジをえぐり取るように摩耗させる最大の原因なのです。
理想は「履くたび結ぶ」+「ヒールロック」

理想は、スニーカー本来の設計思想に立ち返り、「履くたびに靴紐を結び直す」ことです。面倒でも、少なくとも足首に一番近い部分だけでもキュッと締め直すことで、かかとのブレは劇的に防げます。
特に「かかとの浮き」がどうしても気になる方には、「ヒールロック(シューレースロック)」という結び方を試すことを強くおすすめします。
【ヒールロックとは?】 多くのスニーカー(特にランニングシューズ)の履き口には、靴紐を通す穴が2つ並んで配置されています。この一番上にある予備の穴を使って、足首周りを強力に固定する結び方です。
この結び方を実践するだけで、かかとが靴に吸い付くように固定され、かかとの浮きと内側の摩擦を根本から減らすことができます。結び方自体はとても簡単なので、ぜひ一度「ヒールロック やり方」などで検索してみてください。
「どうしても面倒」な人への最終手段:ゴム紐
【ゴム紐(エラスティックシューレース)という選択肢】 「ヒールロックなんて面倒!」「毎回結ぶのは絶対に無理!」という方には、最終手段としてゴム製の伸びる靴紐に変えてみるのも一つの手です。
これなら、靴紐を結んだ(あるいは固定した)状態でもある程度の伸縮性があるため、スリッポンのように脱ぎ履きがしやすくなります。物理的にかかとを踏まなくても脱ぎ履きできるため、結果として「かかとを踏む癖」を矯正しやすいかもしれません。
最近は、結び目がないロックタイプ(キャタピランのようなもの)や、見た目が普通の靴紐に近いタイプなど、種類も非常に豊富です。
【注意点:ホールド感とのトレードオフ】 ただし、これは大きなトレードオフを伴います。通常の靴紐と比べると、伸縮性がある分、どうしてもホールド感(固定力)は低下します。
ランニングやバスケットボール、テニスなど、シビアなフィット感や左右の安定性を要求される場面での使用は、怪我の原因にもなりかねないため、私はおすすめしません。あくまで「街履き」で、デザイン性を損なわず楽に履きたい、という場合の妥協案として理解した上で試してみるのが良いかなと思います。
総括:スニーカーかかと内側の折れ、直し方とケア
今回は、多くの人が悩む「スニーカーのかかと内側の折れ」について、その直し方や修理、予防策を詳しくまとめてみました。
かかとが潰れたり、内側が破れたりすると、お気に入りのスニーカーであっても履くのが億劫になってしまいますよね。
軽度のシワや潰れであれば、アイロンやドライヤーを使ったDIYで形状を復元できる可能性があります。内側の小さな破れなら、100均(ダイソー・セリア)のアイテムを使った応急処置も非常に有効です。
ただし、芯のプラスチックが割れてしまった場合や、スポンジが大きく欠損している場合は、怪我のリスクもあります。無理せずプロの修理業者に相談するのが賢明な判断だと私は思います。
そして何より、一番大切なのは、こうしたトラブルを未然に防ぐ「日頃の予防」です。
【スニーカーを長持ちさせる鉄則】
- かかとを踏まない(必ず「靴べら」を使う)
- 靴紐を緩いまま履かない(履くたびに適切に締める)
- サイズが合わない場合はインソールやヒールグリップで調整する
これらの基本的なことを習慣にするだけで、かかとへの負担は劇的に減り、お気に入りのスニーカーを今よりもずっと長く、快適に愛用できるはずです。
皆さんの大切なスニーカーライフの、何か少しでも参考になれば嬉しいです!

