ランニングシューズって、高機能なものがたくさんありますが、実はその性能を最大限に引き出せるかどうかは、「正しい履き方」と「靴紐の結び方」にかかっている、ということをご存知でしょうか。
私自身、ランニングを始めたばかりの頃は、ただ靴に足を入れてキュッと結ぶだけでした。でも、走っているうちに「かかとが浮く」感覚や、「足の甲が痛い」「靴擦れができる」といったトラブルに悩まされ、買ったばかりのシューズが合わないのかな、と思っていました。
そんな悩みを解決してくれたのが、「ランニングシューズの正しい履き方とかかとの固定」を意識したヒールロック結びだったんです。正しい履き方をマスターすれば、シューズが足の一部になったような一体感が生まれ、走りが本当に快適に変わります。特に、足首に最も近い穴を使うヒールロック結びは、かかとの動きをピタッとロックしてくれるので、マメや脱げやすいといったトラブルも大幅に減らせますよ。この記事では、正しい履き方の基本から、誰でも簡単にできるヒールロック結びの詳しい手順まで、私の経験を交えて解説していきます。
- ランニングシューズの性能を最大限に引き出す正しい履き方
- かかとの浮きや靴擦れを防ぐヒールロック結びの具体的な手順
- 足の甲の痛みやベロのズレといったランナーの悩みを解決する調整法
- 走る目的や足の形に合わせた靴紐の通し方と結び方の選び方
ランニングシューズの正しい履き方とヒールロック結びで快適なランを
ランニングシューズの「理想のフィット感」は、シューズアドバイザーの方も仰るように、「裸足にソールがくっついている」状態を目指すことが大切です。つまり、指先は動かせる自由度がありながら、足全体、特にかかとと甲周りがしっかり固定されている状態です。これを実現するためのランニングシューズの正しい履き方とヒールロック結びの基本から見ていきましょう。
毎回実践したい正しい履き方と4ステップ
ランニングシューズを履く時、「毎回靴紐を緩めて結び直す」のは少し手間かもしれませんが、これはシューズの機能を最大限に引き出すための儀式だと思ってください。人間の足は、朝と夜、体調によってサイズやむくみ具合が変わるため、毎回リセットすることで、その日の足に最適なフィット感を作り出すことができます。
ステップ1:靴紐をつま先まで緩める
まず、シューズに足を入れる前に、靴紐を足先(つま先)の穴まで完全にゆるめます。これは、靴紐による締まりがない、シューズ本来の形に足を収めるための「仕込み」の工程です。緩めることで、足がヒールカップに深く、正しく入るためのスペースを確保します。
ステップ2:かかとを合わせる(トントン)
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足を入れたら、紐を締める前にかかとを定位置に合わせます。ここが最大のポイントです。足首と地面の角度を90度くらいにし、つま先を少し上げた状態で、かかとを床に「トントン」と強めに3回ほど打ちつけてください。これにより、かかと部分にある硬い芯材(ヒールカウンター)に足のかかとがぴったりとフィットします。この「トントン」は、かかと、中足部、前足部の三点を自分の足型にフィットさせるための非常に重要な動作となります。
注意:つま先トントンはNG!
かかとを打ちつけるのではなく、つま先を地面に打ちつける「つま先トントン」は、かかとが前方にズレてヒールカップに固定されないため、正しい履き方としては推奨されません。かかとが前に動くことで爪を痛める原因にもなりかねないので、必ずかかとを打ちつけてくださいね。
ステップ3:中足部をしっかり締める
ステップ2でつま先を上げた角度のまま、靴紐をつま先側から一列ずつ順番に締めていきます。特に重要なのは、シューズとの隙間ができやすい中足部(土踏まずとその反対側の外甲部分)です。ここを横方向からしっかりとホールドするように締めてください。この部分が緩いと、ランニング中に足がシューズの中で動いてしまい、エネルギーロスやトラブルの原因になります。
- 足先の紐は、適度にきつく締める必要はなく、シューズの左右を両手で押さえたときにたるんだ紐を締める程度でOKです。指先が自由に動かせる程度の心地良いフィット感が目安です。
- 中足部は、きつすぎず緩すぎない「ぴったりと固定されている」感覚を意識しましょう。強く締めすぎると足の甲が圧迫され、しびれや血行不良につながることもあります。
ステップ4:かかとをロックする(ヒールロック準備)
最後の仕上げとして、最後の2か所の穴に通した紐を、蝶々結びをする前に**「強め」かつ「つま先方向」**へ引っ張って締めます。この動作で、シューズと足首周りの密着度が高まり、かかとがきっちりロックされます。その後に残った紐を蝶々結びで留めれば完了です。この「かかとのロック」をさらに強化し、ホールド力を極限まで高めるのが、次に解説するヒールロック結びです。
かかとの固定を強化するヒールロック結びの目的
ランニング中の足の動き、特にかかとの浮きは、ランナーにとって大敵です。わずかな浮きでも、それが数千回繰り返されることで、靴擦れやマメの原因になり、最悪の場合はランニング効率を低下させます。この問題を解決してくれるのが、ヒールロック結び(ランナーズ・ループ/ダブルアイレット)です。これは、シューズの持つホールド機能を最大限に引き出すための、非常に合理的な結び方です。
ヒールロック結びがもたらす4つの効果
- かかとの浮き防止: かかとがシューズの中で動く(浮き)ことを根本的に防ぎ、シューズとの一体感を高めます。
- 怪我・トラブルの予防: 足が動くことによる摩擦が減り、マメや靴擦れの原因を効果的に解消します。
- パフォーマンス向上: 足が適切な位置に固定されるため、シューズの衝撃吸収や反発といった機能が最大限に発揮され、シューズが軽く感じる効果もあります。
- シューズの長さ調整: 紐が長すぎる場合に、エクストラホールを使うことで余った紐をうまく使うことができます。
シューズの機能性が高まることで、ランナーの運動効率が向上することが示唆されています(出典:信州大学「ランニングシューズ底材の硬度変化がランナーの生理学的効率に及ぼす影響について」)。正しい履き方とヒールロック結びは、まさにこの「シューズの機能を引き出す」ために不可欠な要素と言えますね。
ヒールロック結びの具体的な手順と留意点

ヒールロック結びは、ほとんどのランニングシューズに備わっている**足首に最も近い2つの補助穴(エクストラホール)**を使って行います。見た目は少し複雑かもしれませんが、仕組みを理解すれば非常に簡単です。
ヒールロック結びのやり方
- 通常の結び方で、靴紐を最後の穴の手前まで通します。
- 最後の穴(補助穴)に、紐を外側から内側へ通し、シューズの側面(外側)に**小さな輪っか(ループ)**を作ります。これを左右両方の穴で行います。
- 作った左右の輪っか(ループ)に、反対側の紐の先端を交差させて通し入れます。
- 紐の端を真上、そして斜め後ろに強く引っ張り、かかと周りの生地をキュッと引き締めてロックします。
- 残った紐を蝶々結びで結べば完了です。この蝶々結びは、紐を解けにくく留める程度でOKです。
ヒールロック結びに関する注意点
この結び方はホールド力が非常に高いため、締めすぎると足首の上あたりや足の甲がキツくなり、痛みやしびれを伴う可能性があります。血行不良やむくみの原因になることもあるため、「圧迫感がない、しかし遊びもない」というフィット感を意識して調整してください。
圧迫の緩和策
もし足の甲に痛みが伴う場合は、最も上の2番目か3番目のアイレット(穴)を意図的に飛ばしてからヒールロックを行う「アイレット飛ばし」を試すと、甲への圧迫感を減らしつつかかとをホールドできます。この調整が細かくできるのが、靴紐の強みですね。
足の甲の痛み対策と靴紐の結び方の工夫

ランナーの中には、「正しい履き方とヒールロック結びを試したのに、どうも足の甲の一点だけが痛む…」という方もいらっしゃいます。これは、靴紐を締めた際に、シューズの**ベロ(タン)の部分が甲の特定の神経や骨に強く当たり、痛みを感じる「タンの圧迫」**が原因かもしれません。特に甲高の方に起こりやすいトラブルです。
タンの圧迫による痛みへの対策:特殊な結び方
紐の通し方を工夫することで、甲への圧迫を軽減しつつ、かかとのホールド感を維持できます。私の経験上、甲の痛みがある場合は、以下の通し方がおすすめです。
- 真ん中を緩める結び方(ギャップ・レーシング): つま先側と足首側をキツめに締め、甲の一番高い部分にあたる真ん中の1~2か所のアイレットは、紐を通さずに意図的に隙間(ギャップ)を作ります。これにより、痛みが出ている部分の圧迫を部分的に逃がします。
- ストレート・バー・レーシング(平行通し): 靴紐を縦に平行に通す結び方です。通常のクロス(X字)通しに比べ、足の甲にかかる圧力が均等に分散されやすく、甲への負担を減らすことができます。特に甲高で、シューズとの相性が悪いと感じる方に有効な方法かなと思います。
タン自体の形状調整
タン(ベロ)の先端が足首に突き刺さるように当たって痛い場合もあります。これは、タンが硬い素材でできている場合に起こりやすいです。革製品などの場合、ドライヤーで温めながらタンの真ん中あたりから上向きに曲げて「フレアを付ける」ことで、突き刺さりを解決できるかもしれません。ただし、シューズの素材によっては、熱による変質の可能性もあるため、注意して試してください。
ベロタンのズレをなくす固定方法

走っているうちにシューズの「ベロ(タン)」が外側や内側にずれてしまうと、見た目だけでなく、ベロの端が足に擦れて靴擦れや水ぶくれを引き起こす原因にもなります。ベロのずれは、足の疲労や痛み、さらには歩行への悪影響にもつながるため、しっかり固定することが重要です。
タンのずれを防ぐ簡単な方法:シューレースホルダーの活用
ほとんどのランニングシューズには、ベロの中央付近に「シューレースホルダー」や「ループ」と呼ばれる縦長の穴や輪が縫い付けられています。ここに靴紐を通すだけで、ベロが中央から動きにくくなり、ずれを大幅に軽減できます。
もしホルダーがない場合の対処法
ホルダーがないシューズの場合は、ベロの先端にあるブランドロゴなどのタグの裏側に靴紐を通すことで、簡易的な固定が可能です。また、ベロと靴本体の片側だけを縫い付けてしまうDIYもありますが、これはシューズ本体に手を加えることになるため、メーカー保証外になる可能性があります。実行する際はご自身の責任でご判断ください。
ゴム紐はランニングには不向きかも
ゴム製の伸縮性のある靴紐は、ベロのずれを防ぐだけでなく、脱ぎ履きも楽になりますが、ランニングのように高いフィット感が求められるシーンでは、走行中に伸びてしまい、ホールド感が落ちる可能性があります。ランニングにおいては、摩擦が高いコットン素材のシューレースに交換する方が、結び目が解けにくくなりおすすめです。
スニーカーのベロがズレる究極的な対策を知りたい方はこちらの記事もお読みくださいスニーカーのベロがずれる!おばあちゃんの知恵袋的な究極対策
ランニングシューズの正しい履き方とヒールロック結びがもたらす効果
正しい履き方とかかとの固定をマスターできたら、さらに一歩踏み込んで、走る目的や足の特性に合わせた靴紐の「通し方」や「結び方」を試してみましょう。これにより、シューズが持つ本来の性能をより深く体感できるはずです。
オーバーラップとアンダーラップの使い分け
靴紐の通し方には、主に「オーバーラップ」と「アンダーラップ」の2種類があります。ランニングシューズにおいては、紐がどの方向からアイレット(穴)に入るかによって、足にかかる圧迫の方向や強さが変わってきます。
| 種類 | 通し方 | 特徴 | 適したシーン |
|---|---|---|---|
| オーバーラップ | 紐をアイレットの上から下へ通す(Xの字の上が紐) | 紐がゆるみにくく、締め付け感が強い。シューズのサポート感が高い。 | レースやスピード練など、速いスピードで走りたいとき、シューズとの一体感を重視したいとき |
| アンダーラップ | 紐をアイレットの下から上へ通す(Xの字の下が紐) | 紐が締めやすく、足なじみが良い。足の甲への圧迫感が少ない。 | LSDなど長い距離をゆっくり走りたいとき、甲の圧迫を避けたいとき |
私は、レースやスピード練習の際はオーバーラップでしっかり固定し、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)のような長い距離をゆっくり走るときは、足への優しさを考慮してアンダーラップにすることで、足のむくみや疲労を軽減できるかなと思います。
ほどけにくいダブルノットやイアンノット
せっかく正しい履き方でフィットさせても、走っている途中で靴紐がほどけてしまうと、集中力が途切れてしまうだけでなく、タイムロスや転倒の原因にもなりかねません。特にフルマラソンのような長距離では、シューズを履き直す時間も惜しいですよね。
ほどけにくい結び方の工夫
- 二重結び(ダブルノット): 通常の蝶結びの後に、輪をもう一度くぐらせて固定する方法です。手軽にできて、解けにくさが格段に上がります。最も一般的な「ほどけにくい結び方」ですね。
- イアン・ノット: 結び目の構造が通常の蝶々結びよりも複雑で、より強力に結ばれます。慣れるまで少し練習が必要ですが、一度マスターすれば、ほとんどほどけることがない結び方です。
シューレース素材の変更も有効
ナイロン素材のシューレースは摩擦が低いためほどけやすい傾向があります。より摩擦が高いコットン素材や、滑りにくい加工が施されたシューレースに交換することも、結び目が解けにくいというメリットがあります。
靴の性能を引き出すフィッティングの重要ポイント
ランニングシューズの性能を最大限に引き出すためには、紐の調整や結び方以前に、シューズ自体がご自身の足に合っているかどうかが最も重要になります。足の専門家も「かかとが合わないシューズを無理に履いたときはすぐにケガをしてしまった経験がある」と指摘しています。
計測から始めましょう:足長とワイズを知る
まずはご自身の足の正確なサイズ(足長と足囲/ワイズ)を知ることが大切です。日本人の足の形は多様で、一律に「26.0cm」というサイズだけでは語れません。足囲(ワイズ)も計測し、ご自身の足に合ったウィズ(幅)のシューズを選ぶことが、快適なランニングの第一歩です。このサイズは、年齢や体型の変化とともに変わることもありますので、定期的に計測することをおすすめします。
サイズ選びの基準と試し履きの最適な時間帯

ランニングシューズのサイズ選びで重要なのは、「指先が自由に動く自由度がありつつ、かかとと甲の部分がしっかりフィットしていること」です。小さすぎると爪を傷める原因になりますし、大きすぎるとシューズの中で足が動いてしまい、マメや靴擦れの原因になります。
- 捨て寸(つま先の余裕): ランニング中は足が前に滑るため、つま先に約1cm程度の余裕(捨て寸)が必要とされています。
- 試し履きの時間帯: 足は一般的に夕方から夜にかけてむくむ傾向があります。普段ランニングをする時間帯や、足が最もむくんでいる時間帯に合わせて試し履きをすることで、レース後半の足の膨張にも対応できるサイズ選びができるかなと思います。(出典:スポーツナビ)
- ソックス: 普段ランニングで履いているソックスを持参して試し履きをしてください。ソックスの厚みでフィット感が大きく変わるため、これも非常に大切なポイントです。
マメや靴擦れを防ぐインソールの活用
正しい履き方や結び方を試しても、特定の箇所にマメができたり、靴擦れが起きたりする場合は、インソール(中敷き)の活用が有効かもしれません。インソールは単なるクッションではなく、足とシューズのつなぎ役として非常に重要な役割を果たします。
インソールの多機能性
既製品のインソールはもちろん、足の専門家によるオーダーメイドのインソールは、単に衝撃吸収性を高めるだけでなく、足の動きを正しい骨の配列(アライメント)に導き、着地時の過度なかかとの倒れ込み(オーバープロネーション)を抑制する役割も果たします。このアライメントの修正は、膝や腰への負担軽減にもつながる可能性があります。
マメや痛みが続く場合は、既製品のインソールを試すか、足の専門家によるオーダーメイドのインソールも検討することをおすすめします。最終的な判断は専門家にご相談ください。
スニーカーの寿命を延ばす保管方法とケア

せっかくランニングシューズの機能を引き出す履き方をマスターしても、シューズ本体を傷めてしまっては意味がありません。日々の習慣や保管方法が、シューズの寿命を大きく左右します。
脱ぎ履き時の注意点:踵を踏むのは絶対NG
スニーカーの寿命を縮める悪習慣の最たるものが、「履いたまま踵を踏む」ことです。これは、かかと内部の硬い芯材(カウンター)を破壊し、シューズの生命線であるサポート性を著しく低下させます。一度カウンターが潰れると、かかとのホールド力が失われ、せっかくのヒールロック結びの効果も半減してしまいます。脱ぎ履きは必ず手を使って丁寧に行うか、靴べらを使い、無理に踵を潰さないようにしてください。
保管方法:湿気対策と型崩れ防止
ランニングシューズを脱いだら、汗による湿気を放置せず、できるだけ早く、湿気を吸収し、型崩れを防ぐ木製のシューキーパー(シューツリー)を入れることをおすすめします。特にランニング後のシューズは湿気がこもりやすいので、乾燥剤や新聞紙を入れるのも有効です。保管場所は、湿気の少ない、換気のよい場所を選び、直射日光を避けるようにしましょう。
ランニングシューズの正しい履き方とヒールロック結びのまとめ
ここまで、ランニングシューズの正しい履き方とヒールロック結びについて、私の経験と知識を交えながら詳しく解説してきました。最新の高性能シューズも素晴らしいですが、その性能を享受できるかどうかは、履く前の「かかとトントン」と、ランニング中の「ヒールロック結びによるかかとの確実な固定」にかかっています。
ランニングシューズの性能を引き出す鍵は、履く前の「トントン」と、ヒールロック結びによる「かかとの確実な固定」にあります。これによって、足とシューズが完全に一体化し、足の甲の痛みや踵の浮きといった、ランナーにありがちなトラブルを大幅に軽減できます。
正しい履き方と結び方をマスターすることは、シューズの機能を最大限に発揮し、快適で安全なランニングライフを送るための必須スキルです。ぜひ、次回のランニングから、この一手間を大切にしてみてください。きっと、走りの快適さが変わってくるはずですよ。ランニングシューズに関する最新の情報や、より詳細な結び方については、今後もワールドスニーカーライブで発信していきますので、チェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!

