そんなふうに疑問に思ったことはありませんか。実は私自身も、初めてこのモデルを手にしたとき、真っ先にシュワルツェネッガー主演の映画を思い浮かべました。1985年というスニーカー黄金期に誕生し、独特の存在感を放つナイキのターミネーター。ヒールに大きく刻まれたNIKEの文字や、ジョージタウン大学との深い関わりなど、この靴には語るべき背景がたくさんあります。しかし、その名前の由来について調べてみると、意外な事実や、多くの人が勘違いしているポイントが見えてきました。
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- 公式情報でも明言されていない名前の正確な起源
- 映画『ターミネーター』と混同されやすい理由
- ジョージタウン大学だけのために作られた特別な歴史
- 1985年の「兄弟モデル」たちとの関係性
ナイキターミネーターの名前の由来における真相
まずは、多くのスニーカーファンが最も気になっている「名前の由来」の核心部分と、このモデルが生まれた歴史的な背景について深掘りしていきます。なぜこのモデルはこれほどまでに特別視され、そして謎に包まれているのでしょうか。
正確なネーミングの起源は不明
結論から先にお伝えしなければなりません。非常に残念なお知らせかもしれませんが、実は「ナイキ ターミネーター(Nike Terminator)」という名前の正確な由来について、ナイキの公式資料やアーカイブ、信頼できる情報源の中には、明確な記述が一切存在しないのです。
「天下のナイキがそんなことあるの?」と驚かれる方も多いでしょう。しかし、これはスニーカーの歴史、特にイノベーションが爆発的に起きていた80年代のモデルにおいては、決して珍しい話ではありません。当時、ナイキは急成長の真っ只中にあり、今の時代のように緻密なマーケティング戦略に基づいた「ブランディング」よりも、とにかく「新しい技術やインパクトのある製品を世に出すこと」に熱量が注がれていた時代でした。
そのため、開発段階のコードネームがそのまま商品名になったり、社内での愛称が定着してしまったりと、ネーミングのプロセスが現代ほど厳格に記録されていないケースが多々あるのです。
ここがポイント どれだけ詳しくリサーチしても「由来は不明」というのが、現時点での正直な回答になります。開発者が直感で決めたのか、会議で決まったのか、その経緯を知る術は失われています。
実際に、私を含めた世界中のスニーカー愛好家が集まる海外のフォーラムや、ヴィンテージスニーカーに特化したマニアックなコミュニティでも、長年にわたりこの議論は繰り返されてきました。しかし、誰もが納得する一次情報や確証(ソース)を提示できた人は一人もいません。「強そうな名前だから」「ヒールのロゴのインパクトに負けない名前が必要だった」といった推測は飛び交っていますが、それらはすべて「想像」の域を出ないのが現状です。
80年代の「記録」事情 1985年当時の製品カタログや広告を見ても、機能説明やカラー展開については詳しく書かれていますが、「なぜこの名前なのか」というネーミングストーリーまで語られているモデルはごくわずかです。
しかし、私はこうも思います。由来が不明であるからといって、このスニーカーの魅力が損なわれるわけではありません。むしろ、公式の正解がないという「空白」があるからこそ、私たちファンがああでもないこうでもないと想像を膨らませる余地が残されているとも言えます。
この「出自のミステリアスさ」もまた、ターミネーターが単なる古い靴ではなく、伝説的なモデルとして語り継がれる理由の一つなのかもしれません。
1985年当時の歴史的な背景
名前の由来を推測する上で欠かせないのが、このモデルが誕生した「時代」の空気感です。ターミネーターがリリースされた1985年は、単なる「昔の年」ではなく、現代のスニーカーカルチャーの基礎が築かれた、まさに「歴史的な特異点」とも呼べる伝説の1年でした。
この年がどれほど特別だったかというと、現代でもスニーカーシーンの頂点に君臨し続ける名作たちが、まるで示し合わせたかのように一斉に誕生しているのです。
- バスケットボールシューズの概念を根底から覆した「エアジョーダン1(Air Jordan 1)」
- カレッジバスケットボールの色鮮やかなチームカラーを纏った「ダンク(Dunk)」
- そして、圧倒的な存在感を放つ「ターミネーター(Terminator)」
これらが全て同じ1985年にリリースされたのは、決して偶然ではありません。当時のナイキは、それまで得意としていたランニングシューズ市場だけでなく、人気が爆発しつつあったバスケットボール市場での覇権を握るため、社運を賭けた大規模な戦略を展開していた時期でした。
当時のナイキの状況 80年代前半、ナイキはエアロビクスブームに乗り遅れるなどして一時的に業績が低迷していました。その打開策として、当時のマイケル・ジョーダンとの契約や、大学バスケへの積極的なアプローチなど、攻撃的なマーケティングに打って出たのがちょうどこの頃です。
特に重要だったのが、NCAA(全米大学体育協会)をターゲットにしたキャンペーン「Be True To Your School(母校に誇りを持て)」です。それまで「白」が当たり前だったバスケットボールシューズに、各大学のスクールカラーを落とし込むというアイデアは革命的でした。
このキャンペーンにより、観客や学生たちは自分の大学のカラーの靴を履いて応援するという新しいカルチャーが生まれました。ターミネーターもまた、この「カレッジカラープログラム」の最重要モデルの一つとして、戦場のようなコートに送り出されたのです。
当時のアメリカの大学バスケの熱狂ぶりは、今のNBAをも凌ぐほど凄まじいものがありました。そんな激しい競争社会の中で生き残るために生まれたシューズだからこそ、「ターミネーター(終わらせる者、抹殺者)」という、他を圧倒するようなアグレッシブで強い名前が与えられたのかもしれません。そう考えると、由来が不明であっても、このネーミングが時代背景と完璧にマッチしていることが分かります。
ジョージタウン大学専用のモデル

ターミネーターというモデルを語る上で、絶対に避けて通れないのが、NCAA(全米大学体育協会)の名門中の名門、ジョージタウン大学(Georgetown University)との切っても切れない「蜜月関係」です。
1985年当時、ナイキが展開した「Be True To Your School」キャンペーンでは、ケンタッキー大学、ミシガン大学、セント・ジョンズ大学など、名だたる強豪校にそれぞれのスクールカラーを配した「ダンク(Dunk)」が提供されていました。しかし、ジョージタウン大学だけは、ダンクではなく「ターミネーター」が与えられたのです。
これは単なる色違いやデザイン変更レベルの話ではありません。他の大学が共通の「ダンク」というプラットフォームを使用している中で、ジョージタウン大学のためだけに、わざわざ別の金型を用意し、ゼロから設計された「完全なる特注(Bespoke)モデル」だったのです。今の時代で言えば、特定のチームのためだけに新しいシグネチャーモデルを作るようなもので、どれほど破格の待遇だったかが分かります。
では、なぜ一大学のバスケットボールチームがこれほどまでに優遇されたのでしょうか。
その最大の理由は、当時のジョージタウン大学バスケットボール部「HOYAS(ホヤス)」を率いた伝説的なヘッドコーチ、ジョン・トンプソン(John Thompson)氏の存在にあります。彼は単なる監督ではありませんでした。実は、ナイキの創業者フィル・ナイトとも親交があり、ナイキの取締役会メンバーやコンサルタントを務めるなど、ブランドの経営判断にも関わるほどの強力な発言権を持っていたのです。
さらに、当時のジョージタウン大学には、後にNBAのレジェンドとなる怪物センター、パトリック・ユーイングが在籍しており、1984年には全米優勝を果たすなど圧倒的な強さを誇っていました。
歴史的なつながりと実績 ジョン・トンプソン氏は、アフリカ系アメリカ人として初めてチームをNCAA優勝に導いた名将であり、ナイキにとっては象徴的なパートナーでした。彼の実績やジョージタウン大学での偉大な足跡は、大学の公式記録にも詳しく残されています。 (出典:Georgetown University Athletics Hall of Fame ‘JOHN R. THOMPSON JR.’)
「自分たちのチームには、他とは違う特別なシューズが必要だ」。そんな現場の強い意志と、ナイキとの太いパイプ、そして全米最強という実績。これら全ての要素が奇跡的に重なった結果、既存の「ダンク」の枠には収まらない特別なモデル、ターミネーターが誕生したのです。
つまり、ターミネーターは単なる商品ではなく、ジョージタウン大学の栄光とプライドそのものを具現化したスニーカーと言っても過言ではありません。
特徴的なヒールのビッグナイキ

ターミネーターの外見において、一度見たら絶対に忘れない視覚的なインパクトを放っているのが、かかと部分の大胆なデザインです。ヒールカウンターの面積を限界まで使い、ブロック体で大きく刻まれた「NIKE」のロゴ。これこそが、通称「ビッグナイキ(Big Nike)」と呼ばれる、このモデル最大のアイデンティティです。
通常、スニーカーのブランドロゴはサイドのスウッシュやタンのタグで主張するものですが、ターミネーターは「背中で語る」スタイルを選びました。これには、80年代当時のナイキが持っていた「もっと目立ちたい」「他ブランドを圧倒したい」という強烈な野心が表れています。
実は、このデザインには面白いルーツがあります。ジョージタウン大学の選手たちだけに支給されたオリジナルの「プレイヤーズ・エクスクルーシブ(PE)」モデルでは、この部分に「NIKE」ではなく、大学のチーム愛称である「HOYAS」という文字が刻まれていました。全米中が注目するカレッジバスケの試合中継で、選手がコートを走り去るたびに「HOYAS」の文字がテレビ画面に映し出される。これは当時としては画期的なプロモーション効果を生んでいました。
マニア垂涎の「HOYAS」仕様 オリジナル当時の「HOYAS」ロゴが入った個体は、博物館級の激レアアイテムとして扱われています。ちなみに、近年の復刻版やコラボモデルでは、この「HOYAS」ロゴを忠実に再現した特別仕様がリリースされることもあり、そのたびに争奪戦が巻き起こります。
私たちが手にする一般発売モデルでは、さすがに特定の大学名を入れるわけにはいかないため「NIKE」の文字に変更されました。しかし、文字が変わってもその迫力は健在です。むしろ、巨大なブランドロゴを背負うことで、ストリートでの存在感はさらに増しました。
ファッション的なメリット
- バックスタイルの主役になる:シンプルなジーンズやチノパンを合わせても、後ろ姿だけで「スニーカー好き」であることをアピールできます。
- 裾とのバランス:パンツの裾を少しロールアップしたり、ジョガーパンツを合わせたりして、あえてこのロゴを全開にして履くのが通のスタイリングです。
街中で前の人を歩いているとき、この巨大なロゴが目に入ると、スニーカーファンなら一発で「あ、ターミネーターだ!」と分かりますよね。エアフォース1やダンクにはない、この「無骨で直球な自己主張」こそが、ターミネーターが長年にわたり愛され続けている理由の一つなのです。
ダンクやエアジョーダンとの関係
よくスニーカーショップや雑誌で「ダンクの兄弟モデル」や「エアジョーダン1のノンエア版」といった表現を目にすることがあります。これらはアッパーのパターンや誕生年が近いためですが、構造的には明確な違いがあります。
ここで、1985年に登場した3つの名作モデルの違いを整理してみましょう。
| モデル名 | クッション | ヒールデザイン | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ターミネーター | ノンエア | 巨大なロゴ(BIG NIKE) | ジョージタウン大専用 |
| ダンク | ノンエア | 標準的なNIKEロゴ | 全米各大学向け |
| エアジョーダン1 | AIR搭載 | ロゴなし(シンプル) | マイケル・ジョーダン用 |
ターミネーターは、ダンクと比較すると履き口が直角に近く、アキレス腱を包み込むような高いカットが特徴です。また、シューレースホール(靴紐の穴)の並びや補強パーツの形状も微妙に異なり、より直線的で無骨なシルエットを持っています。この絶妙な違いが、通なファンを惹きつけてやまない理由の一つですね。
ナイキターミネーターの名前の由来とよくある誤解
次に、検索ユーザーの皆さんが最も気にしているであろう「映画」との関係や、よく似たモデルとの混同について解説します。ここを理解すると、スニーカー通としてのレベルが一段上がります。
映画ターミネーターとの関連性

「ターミネーター」という単語を聞いて、1984年に公開されたジェームズ・キャメロン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画『ターミネーター(The Terminator)』を思い浮かべない人はいないでしょう。あの革ジャンにサングラス姿の殺人サイボーグは、当時のポップカルチャーにおいてあまりにも強烈なアイコンでした。
スニーカーファンとしてどうしても気になってしまうのが、その完璧すぎる「タイミング」です。映画の全米公開は1984年10月。そして、ナイキのターミネーターが市場に投入されたのは翌年の1985年です。映画が大ヒットし、世界中で「ターミネーター」という言葉が流行語のように飛び交っていた、まさにその熱狂の渦中にこのスニーカーはデビューしました。
時系列の奇妙な一致 映画公開(1984年)の直後に製品開発の最終段階やネーミング決定が行われていたと仮定すると、当時の開発チームが映画の影響を全く受けていないと考える方が不自然なほど、時期が重なっています。
しかし、ここで冷静に事実を確認する必要があります。先ほどもお伝えした通り、ナイキ公式からは「映画が名前の由来である」というアナウンスは過去一度もありません。
もしこれが正式な「コラボレーションモデル」であれば、シュータンやインソールに映画のロゴを入れたり、広告でキャラクターを使用したりするはずです。しかし、そういった権利関係をクリアした痕跡は一切見当たりません。つまり、ビジネス的な正式契約に基づいたネーミングではないことは確実です。
では、完全に無関係な偶然なのでしょうか? 多くのファンや有識者は、当時のナイキの「勢い」と「遊び心」に注目しています。
有力な推測説
- 流行への便乗:当時のマーケティング担当者が、世間で話題沸騰中のパワーワードを借用して、話題作りを狙った可能性。
- イメージの合致:「Terminator(終わらせる者、抹殺者)」という言葉が持つ、強くてタフで、相手をねじ伏せるようなイメージが、大学バスケの激しい肉弾戦を制するシューズのコンセプトに合致した可能性。
「公式には無関係だが、現場のノリで名前を頂いたのではないか」。そんなふうに、大企業の隙間にある当時の緩さや自由な空気感を想像するのも、このモデルの楽しみ方の一つです。公式見解がない以上、これらはあくまで「ファンの間でのロマンある推測」の域を出ませんが、そう信じたくなるだけの説得力が、このスニーカーと映画には共通して存在しています。
劇中でカイルリースが履いた靴

ここで、スニーカーファンや映画ファンの間でも非常に多く見られる、ある「巨大な勘違い」を解消しておきましょう。「映画『ターミネーター』の中で、未来から来た戦士カイル・リースが履いていた靴こそが、ナイキ ターミネーターだ」と信じている方がいらっしゃいますが、断言します。それは間違いです。
名前が同じなのでそう思い込んでしまうのも無理はありません。しかし、劇中でカイル・リース(マイケル・ビーン演)が警察の追跡を逃れてデパートに侵入し、現地調達(という名の窃盗ですが…)をして着用したのは、「ナイキ バンダル シュプリーム(Nike Vandal Supreme)」という全く別のモデルです。
具体的にどのようなモデルだったかというと、アッパー素材にレザーではなく光沢のある「ブラックナイロン」を使用し、スウッシュ(ナイキのロゴマーク)が「シルバー」で縁取られた、非常に近未来的なデザインの一足でした。日本ではその配色から、通称「ウルトラマンカラー」とも呼ばれ親しまれています。
映画のファンなら、あの名シーンを鮮明に覚えているのではないでしょうか。
- 試着室でカイルが新しい服に着替えるシーン。
- スニーカーを箱から取り出し、足を入れる。
- そして、足首にあるベルクロ式のアンクルストラップを「バリバリッ、ギュッ」と強く締め上げる。
この「ストラップを締める動作」こそが決定的な証拠です。ナイキ ターミネーターには、足首を固定するストラップは付いていません。あの印象的なギミックと音は、バンダルだけが持つ特徴なのです。
ここだけは覚えておこう 映画『ターミネーター』に出てくる靴は「バンダル」。 名前が同じ「ターミネーター」は映画には一秒たりとも出てきません。 ここを混同していると、詳しい人に「あ、ニワカだな」と思われてしまうかもしれないので要注意です。
ちなみに、この「バンダル」も2015年の映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』の公開に合わせて復刻されるなど、映画とは切っても切れない関係にあります。一方で、私たちのテーマである「ナイキ ターミネーター」は、名前こそ映画と同じですが、スクリーンデビューは果たしていないという、なんとも皮肉で面白い関係性なのです。
バンダルと間違われやすい理由

なぜこれほどまでに多くの人が、ターミネーターとバンダルを混同してしまうのでしょうか。単なる勘違いで片付けるにはあまりにも広範囲に誤解が浸透しています。私は、これが個人の知識不足のせいではなく、「間違えるのも無理はない」という不運な条件が重なりすぎているからだと分析しています。
具体的に、情報が脳内でバグを起こしてしまう4つの主な要因を紐解いてみましょう。
- 名前の完全一致:これが最大の元凶です。靴の名前が「ターミネーター」で、映画のタイトルも「ターミネーター」。人間は情報を関連付けて記憶する生き物なので、無意識のうちに「ああ、あの映画の靴ね」と脳が自動処理して結びつけてしまうのです。
- タイムラインの重複:映画の公開(1984年)とシューズの発売(1985年)がほぼ同時期です。映画の熱狂が冷めやらぬ中、あるいはビデオレンタル等でブームが継続している最中に店頭に並んだため、当時の消費者ですら記憶が曖昧になっているケースがあります。
- シルエットの類似性:どちらも80年代中盤のナイキを象徴する、足首まで覆う「ハイカット」のバスケットボールシューズです。エアジョーダン1にも通じる、当時の「ゴツくてタフなバッシュ」というデザイン言語が共通しているため、パッと見の印象が非常に似ています。
現代における情報の再錯綜(2015年問題) さらに話をややこしくしたのが、2015年の映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』の公開です。この時、劇中の衣装として「ナイキ バンダル」が公式に復刻されました。 この際、多くのファッションニュースが「映画『ターミネーター』の着用モデルが復刻!」といった見出しで記事を出したため、それを読んだ人が「ターミネーター(という映画)のモデル = ターミネーター(という名前の靴)」と誤変換して記憶してしまった可能性が高いのです。
このように、間違えるための材料が完璧に揃ってしまっているのが現状です。しかし、実物を見ればその違いは一目瞭然です。ここさえ押さえておけば、あなたはもう迷うことはありません。
決定的な見分け方:2つのパーツを見るだけ
| 足首(アンクル) | ストラップ(ベルト)が付いていれば「バンダル」 何も付いていなければ「ターミネーター」 |
| かかと(ヒール) | 巨大なNIKEロゴがあれば「ターミネーター」 普通のロゴなら「バンダル」 |
「ストラップのバンダル、ビッグロゴのターミネーター」。この合言葉さえ覚えておけば、スニーカーショップや古着屋で友人にも自信を持って解説できるはずです。どちらも80年代が生んだ素晴らしい名作であることに変わりはありませんから、それぞれの個性を正しく理解して愛でてあげたいですね。
復刻モデルの人気や市場価値

スニーカー市場において、ターミネーターは非常に独特な立ち位置にいます。毎月のように新色やコラボモデルが乱発される「エアジョーダン1」や「ダンク」とは異なり、ターミネーターの復刻サイクルは非常に緩やかです。
数年に一度、忘れた頃にひっそりと、しかし確実にオリジナル仕様で戻ってくる。この「希少性」と「枯渇感」こそが、コアなファンを惹きつけてやまない理由です。過去の例を見ても、2003年、2008年、2014年と、一度逃すと次のチャンスまで長い冬の時代を過ごさなければならないモデルなのです。
直近の大きなトピックとしては、2022年にオリジナルカラーである「ジョージタウン/グラニット アンド ダーク オブシディアン(FB1832-001)」が待望の復刻を果たしたことが挙げられます。
2022年復刻モデルの市場動向 発売前は「久しぶりの復刻だから争奪戦になるのでは?」と一部で予想されていました。しかし、蓋を開けてみると、二次流通市場でのプレ値(プレミア価格)はそこまで高騰せず、定価(税込16,500円)前後、あるいはサイズによっては定価割れで取引されるなど、非常に落ち着いた動きを見せました。
この現象について、SNSや掲示板では「若者にはこの渋さが刺さっていない」「デザインが今のトレンドと比べて古臭いのではないか」といった厳しい意見も見られました。確かに、Travis Scottコラボのような派手な盛り上がりはありませんでした。
しかし、私はこれを「ネガティブな要素」とは全く捉えていません。むしろ、私たちのような往年の名作を愛するスニーカー好きにとっては、朗報中の朗報でした。
- 転売ヤーの不在:投機目的のバイヤーが群がらなかったため、純粋に履きたい人が定価で購入できた。
- 実用的な名作:プレ値を気にせずガンガン履き込める「日常の相棒」として手に入れやすかった。
また、オリジナルカラー以外にも、エアフォース1の名作カラーをサンプリングした「ココアスネーク(白蛇)」や、コムデギャルソンとのコラボレーションモデルなどは、感度の高いファッション層からしっかりと評価されており、モデル全体としてのポテンシャルは依然として高いものがあります。
「みんなが履いている流行りの靴」ではなく、「分かる人だけが分かる、通好みな一足」。現在のターミネーターの市場価値は、まさにそんな玄人好みなポジションに落ち着いていると言えるでしょう。もし定価近くで見かけることがあれば、迷わず確保しておくことを強くおすすめします。
カレッジカラーとデザインの魅力
最後に、ターミネーターというモデルを名作たらしめている最大の要素、それは「完璧な配色」と「無骨な機能美」について語らせてください。
ジョージタウン大学のスクールカラーである「ネイビー(紺)」と「グレー(灰)」。ナイキのカラーコードで言うところの「ダークオブシディアン」と「グラニット」のコンビネーションは、数あるスニーカーの配色の中でも、最も洗練された「大人なカラーリング」の一つだと私は確信しています。
同時期に発売された「ダンク」のカラーバリエーション(赤×白、黄×黒、オレンジ×白など)が、非常にポップでエネルギッシュな印象を与えるのに対し、ターミネーターのこの配色は、どこか理知的で、静かな闘志を感じさせる「ストイックな美しさ」を持っています。
通称「ターミネーターカラー」 この「紺×灰」の配色はあまりにも象徴的なため、エアジョーダン1やダンク、エアフォース1などで同様のカラーが出た際も、スニーカーファンの間では敬意を込めて「ターミネーターカラー」や「ジョージタウンカラー」と呼ばれています。
この落ち着いたトーンは、ファッションの観点から見ても最強の武器になります。
- ヴィンテージデニム:色落ちしたインディゴブルーと、シューズのネイビーが絶妙なグラデーションを作ります。
- ミリタリーパンツ:カーゴパンツのオリーブドラブやカーキといったアースカラーに対し、グレーの挿し色が上品に馴染みます。
- スウェットスタイル:グレーのスウェットパンツと合わせれば、海外セレブのようなリラックス感のある「ワントーンコーデ」が完成します。
派手なハイテクスニーカーや、プレ値がついたコラボモデルを履くのももちろん楽しいですが、こういった「特定の大学のために作られた質実剛健なバッシュ」という背景を持つスニーカーを履くと、単なるファッションアイテム以上の重みを感じられます。
足を入れた瞬間、当時のカレッジバスケの熱気や、アスリートたちの汗が染み込んだような歴史の厚みを感じる。そんな「背筋が少し伸びるような感覚」を味わえることこそが、ターミネーターというモデルが持つ、色褪せない魅力の正体なのかもしれません。
ナイキターミネーターの名前の由来の総括
最後に、今回の内容をまとめます。ナイキ ターミネーターの名前の由来については、残念ながら「映画が元ネタだ」と断定できる公式情報はありませんでした。
- 名前の正確な由来は公式にも不明(ミステリー)。
- 映画『ターミネーター』に出てくる靴は「バンダル」であり、本モデルではない。
- ジョージタウン大学専用の特注モデルとして生まれた歴史的価値がある。
- ヒールの「ビッグナイキ」ロゴが最大の特徴であり、デザインのアイコン。
名前の由来がはっきりしないからこそ、当時の空気感や映画との関連を想像して楽しめるのも、ヴィンテージスニーカーの面白さです。「もしかしたら、開発者が映画を見て興奮して名付けたのかもしれないな」なんて想像しながら、街でこのスニーカーを履いて歩くのも一興です。もし見かけたら、「あれはジョージタウン大学のための特別な靴なんだよ」と思い出してみてくださいね。
※本記事の情報は執筆時点のものです。正確な情報はナイキ公式サイト等をご確認ください。また、スニーカーの価格や相場は変動しますので、購入の際は最新の情報をチェックすることをおすすめします。

