SNSやインターネットを見ていると、時々「このスニーカーは何色に見えますか?」という画像が流れてきて、コメント欄で「ピンクと白でしょ?」「いやいや、どう見てもグレーと緑だよ」と大論争になっているのを見かけたことはありませんか。スニーカーの色が違う錯覚に関しては、なぜ人によって全く異なる色に見えてしまうのかという疑問や、右脳派や左脳派といった性格診断につながるという噂、さらには画像の明るさを変えると色が変わる仕組みなど、多くの人が検索して答えを探しています。私自身も最初はグレーにしか見えなかった画像が、あることをきっかけに突然ピンクに見えるようになり、人間の脳の不思議さに驚愕した経験があります。この記事では、なぜこのような現象が起きるのか、その科学的な理由や正解の色について、スニーカー好きの視点から分かりやすく解説していきます。
- 人によってスニーカーの色が「ピンクと白」や「グレーと緑」に分かれる理由
- 右脳派や左脳派で色の見え方が違うというネット上の噂の真偽
- 脳が勝手に色を補正してしまう色の恒常性というメカニズム
- グレーに見えている人がピンクに見えるようになるための具体的な方法
スニーカーの色が違う錯覚画像の話題性
まずは、世界中のネットユーザーを混乱の渦に巻き込んだ、あの有名なスニーカーの画像たちがどのようなものだったのか、そしてなぜこれほどまでに話題になったのかを詳しく振り返っていきましょう。同じ一枚の画像を見ているはずなのに、隣にいる家族や友人と全く意見が噛み合わないという体験は、何度やっても不思議で面白いものです。
VANSの画像はグレーかピンクか

この「色の錯覚」というトピックにおいて、まさに伝説の火付け役とも言える画像があります。それが、2017年10月頃にFacebookやTwitter(現X)で爆発的に拡散され、世界中を巻き込んだVANS(ヴァンズ)の定番モデル「オールドスクール」の写真です。「友人が送ってきたこの靴、何色に見える?」という何気ない投稿から始まったこの論争は、瞬く間に数万リツイートを超え、ネットニュースやテレビ番組でも取り上げられる社会現象となりました。スニーカー好きの私も、当時のタイムラインがこの画像で埋め尽くされていた光景を今でも鮮明に覚えています。
この画像を見た人々の反応は、本当に驚くほど真っ二つに分かれます。面白いのは、ただ意見が割れるだけでなく、お互いに「相手がふざけているのではないか?」と疑ってしまうほど、見えている世界が乖離してしまう点です。
【派閥A:ピンク&ホワイト派】 「どう見ても、可愛らしいパステルピンクのアッパーに、白いシューレース(靴紐)とソールがついている。これ以外の色に見えるなんて、目がどうかしているんじゃないか?」と主張するグループ。
【派閥B:グレー&ティール派】 「いやいや、何を言っているの? スニーカー本体は落ち着いたグレーで、靴紐とサイドラインはくすんだ青緑色(ティール/ミントグリーン)でしょ? ピンク要素なんて1ミリも見当たらないよ」と主張するグループ。
私自身、初めてスマートフォンの画面でこの画像を見たときは、100%の自信を持って「グレー&ティール派」でした。「これは目の錯覚を利用したひっかけ問題か何かで、実はものすごく地味な色のスニーカーを、派手な色だと言い張るジョークなのだろう」くらいに高を括っていたのです。しかし、隣にいた友人に画面を見せたところ、「え? 何言ってるの? めちゃくちゃ可愛いピンクの靴じゃん」と真顔で即答され、背筋がゾワッとしたのを覚えています。「私の目がおかしいのか、それとも友人の目がおかしいのか?」と本気で不安になりましたが、これはどちらの目も正常で、脳内での画像処理のプロセスが違っていただけだったのです。
では、なぜこのような奇妙な現象が起きてしまったのでしょうか。この画像が撮影された状況を詳しく紐解くと、いくつかの偶然が重なっていたことが分かります。
どうやらこの写真は、薄暗い室内のような場所で、スマートフォンのフラッシュを焚いて至近距離から撮影されたもののようです。その結果、画像全体に非常に強い「青み(シアン色の被り)」がかかってしまい、本来の色情報が著しく歪んで記録されてしまいました。さらに、スマートフォンのカメラ特有の画質の粗さやノイズも相まって、脳が色を判断するための手がかりが極端に曖昧になってしまっていたのです。
ティール(Teal)とは? 「グレー&ティール派」の人が感じる「ティール」とは、鴨の羽色のような、青と緑の中間にある「青緑色」のことです。画像全体にかかった青いフィルターの影響で、本来は白であるはずの靴紐部分に青みが乗り、それがグレーの補色関係などと複雑に作用して、独特のミントグリーンのような色に見えてしまうのです。
当時、ネット上では「フォトショップで意図的に色を加工された画像ではないか?」という疑いの声も多く上がりましたが、検証の結果、これは高度な加工ではなく、劣悪な撮影環境が生んだ「奇跡のワンショット」であったことが判明しています。この「情報の曖昧さ」こそが、私たちの脳の解釈を分岐させ、大論争を引き起こす最大の要因となっているのです。
ビリーアイリッシュの靴も色が違う

VANSの騒動から数年が経ち、ほとぼりが冷めたと思われた2020年、今度は世界的な歌姫ビリー・アイリッシュさんが自身のInstagramストーリーズに投稿したある画像が、再びネット上を騒然とさせました。それが、NIKE(ナイキ)の人気モデル「エア モア アップテンポ」、通称「モアテン」の写真です。
事の発端は、ビリー・アイリッシュさんが自宅で靴の整理をしていた際、父親にこのスニーカーを見せたところ、「それはピンクと白の靴だね」と言われたことでした。ビリー自身にはどう見ても「ミントグリーンと白」に見えていたため、「パパ、何言ってるの? これはミントグリーンだよ!」と驚き、そのやり取りを動画でファンに共有したのです。
すると、ファンの間でも意見が割れる大論争に発展しました。
| 見え方のパターン | 特徴 | 割合(感覚値) |
|---|---|---|
| ミントグリーンと白 | ビリー本人と同じ見え方。爽やかな緑色に見える。 | 約半数 |
| ピンクと白 | ビリーの父と同じ見え方。薄いピンクに見える。 | 約半数 |
「私もピンクに見える!」「いや、どう見ても緑でしょ」と、VANSの時と同じような論争が再燃しました。ビリー・アイリッシュさんはその後、実際に屋外の日光の下でそのスニーカーを撮影し、「ほら見て!やっぱりミントグリーンじゃない!」と証明する動画まで投稿しています。それでもなお、「外で見てもピンクに見えるんだけど…」というファンが続出しました。
この事例が面白いのは、VANSの画像とは違い、そこまで極端に暗い場所で撮影されたわけではないにもかかわらず、錯覚が起きたという点です。これは、スニーカーの素材感や、隣に置いてあった別の靴の色、あるいは室内の照明の色温度(暖色系か寒色系か)といった要素が複雑に絡み合い、脳の補正機能を誤作動させた結果だと言われています。有名人が当事者となって発信したことで、この「色の錯覚」現象は改めて世界的な注目を集めることになりました。
あのドレスの色論争と同じ原理

スニーカーの色の違いについて語る上で、絶対に外せないのが2015年にインターネット史上最大級の論争を巻き起こした「あのドレス(The Dress)」の存在です。スコットランドの結婚式に出席するために用意された一着のドレスの写真がTumblrに投稿されるやいなや、「青と黒のボーダー」に見える派と、「白と金のボーダー」に見える派で世界が分断されました。
実は、今回紹介しているVANSのスニーカーも、ビリー・アイリッシュのNIKEも、起きている現象の根本的な原理はこのドレスと全く同じです。科学的には、これは「照明条件の不確実性」に対する脳の解釈の違いとして説明されます。
ドレスの画像の場合、背景が白飛びしており、逆光のようにも見えるし、日陰のようにも見えるという、非常に光源が特定しにくい写真でした。このとき、脳内で次のような処理が行われます。
- 「このドレスは日陰(青っぽい光)の中にある」と解釈した脳: 青い光の影響を差し引こうとするため、ドレスの青い部分が白く補正され、黒いレース部分が反射で金色に見えていると解釈し、「白と金」に見えます。
- 「このドレスは強い人工照明(黄色っぽい光)の下にある」と解釈した脳: 黄色い光の影響を差し引こうとするため、青色はより鮮やかに青く、金色の部分は黒だと判断し、「青と黒」に見えます。
スニーカーの画像は、このドレス現象の「続編」あるいは「スニーカー版」として扱われることが多いです。ドレスの時は布の質感やレースの光沢感が判断を難しくしていましたが、スニーカーの場合はソールやシューレース(靴紐)という「本来は白であるはず」の部分が存在することが、脳にとっての大きなヒント(あるいはミスリードの元)になっています。「紐は白いものだ」という強い思い込み(事前知識)が、色の補正を強力に推し進めたり、逆に邪魔をしたりすることで、人によって見え方が変わってくるのです。
右脳派や左脳派という性格診断の嘘

このような錯覚画像が流行すると、決まってセットで拡散されるのが「性格診断」や「脳タイプ診断」のような情報です。あなたもSNSで、次のような投稿を見たことがありませんか?
【よく見かけるデマ情報】 「ピンクに見える人は右脳派! クリエイティブで直感的な芸術家タイプです。」 「グレーに見える人は左脳派! 論理的で計算高い理系タイプです。」
結論から申し上げますと、この説には科学的な根拠は一切ありません。これは、心理学でいう「バーナム効果(誰にでも当てはまることを自分だけのことのように感じてしまう心理)」を利用した、単なる遊びやジョークの類です。しかし、あまりにも多くの人がこれを信じて拡散してしまったため、まるで事実であるかのように広まってしまいました。
色の知覚処理は、脳の「視覚野」と呼ばれる部分で行われる、生物としての非常に原始的で基本的な機能です。これは、私たちが計算をしたり絵を描いたりするような高次の脳機能(いわゆる右脳・左脳の役割分担とされるもの)とは異なるレベルで起きています。網膜から入ってきた光の情報を、脳がどう処理して映像化するかというプロセスにおいて、性格や職業適性、芸術的才能などは全く影響しません。
ですから、もしあなたが「クリエイティブな仕事をしているのに、論理的なグレーに見えてしまった…」と落ち込む必要は全くありませんし、逆に「ピンクに見えたから私は天才肌かも!」と過信する必要もありません(笑)。これはあくまで、あなたの脳が「今の光」をどう解釈したかという、瞬発的な情報処理のクセが出ただけのことなのです。性格診断として楽しむ分には良いですが、科学的な事実とは切り離して考えるようにしましょう。
スニーカーの色の錯覚はなぜ起きるのか

性格や脳のタイプが原因ではないとすれば、一体何がこれほどまでに劇的な見え方の違いを生んでいるのでしょうか。その答えは、私たちの脳が常に行っている「高度な推論(推測)プロセス」の中に隠されています。
私たちは普段、目を開けてさえいれば、自動的にありのままの世界が見えていると信じて疑いません。しかし、実際にはそうではありません。目はあくまで、光を取り込んで電気信号に変換する「カメラのレンズやセンサー」の役割を果たしているに過ぎません。その送られてきた断片的な電気信号を、意味のある「映像」として組み立て、色付けし、レンダリング(描画)しているのは、高性能なコンピュータである「脳」なのです。
このプロセスにおいて、脳は常に「不完全な情報」と戦っています。網膜に届く光の情報は、影になっていたり、反射していたり、距離感が不明だったりと、実はノイズだらけで非常に曖昧なものです。そこで脳は、過去の膨大な記憶データや経験則(これを「事前知識」や「プライア」と呼びます)を総動員して、「今の状況はたぶんこうだろう」と瞬時に予測を行い、足りない情報を勝手に補完して埋め合わせているのです。つまり、私たちが見ている世界は、「脳が予測に基づいて作り出したバーチャルな再構成映像」と言っても過言ではありません。
特に、今回のスニーカー画像のように、「光源の色(照明)」も「物体の本来の色」も両方ともはっきりしない状況は、脳にとって非常に難解なパズルとなります。専門的な視点では、この現象を説明するために「SURFPAD(サーフパッド)」という興味深いモデルが提唱されています。
SURFPAD原則とは? 神経科学者パスカル・ウォリッシュ氏らが提唱した、知覚の不一致を説明する概念です。 Substantial Uncertainty(重大な不確実性) & Ramified/Forked Priors/Assumptions(分岐した事前知識/仮定) = Disagreement(不一致)
簡単に言うと、「情報が曖昧すぎるため、個々人が持っている『思い込み』や『前提』の違いによって、導き出される答えが食い違ってしまう状態」を指します。
このスニーカー画像の場合、画像全体が青っぽいため、「これは青い照明の下にある(Uncertainty)」という解釈が成り立ちます。ここで、脳が最初の分岐点に立たされます。
- ルートA:「これは青い光(日陰など)だ」という前提を採用した脳 「青い光を取り除けば、本当の色が見えるはずだ」と推論を進めます。Photoshopで「青色フィルター」をオフにするような処理を脳内で実行し、その結果、隠されていた「ピンクと白」という答えを導き出します。
- ルートB:「これは白い光(通常照明)だ」という前提を採用した脳 「光は白いはずだから、この青みは物体そのものの色だ」と推論を進めます。フィルター補正を行わず、そのままのデータを出力するため、「グレーと青緑」という答えを導き出します。
恐ろしいのは、この推論プロセスが「無意識下で、0.1秒以下の速さ」で行われることです。私たちは自分が推論したことにすら気づきません。さらに、脳には一度「これだ!」と決めた解釈を維持しようとする強力な「ロック機能(安定化機能)」が備わっています。もし、見るたびに色が変わってしまったら、私たちは安心して生活できないからです。
「最初はグレーだったのに、一度ピンクに見えたらもうグレーに戻れない!」という現象が起きるのは、脳が「ピンクという解釈の方が辻褄が合う」と学習し、認識のモデルを書き換えて上書き保存してしまったからです。この柔軟でありながら頑固でもある脳の性質こそが、スニーカーの色をめぐる終わらない論争の正体なのです。
スニーカーの色の錯覚に関する科学的解説
ここからは、さらに一歩踏み込んで、この不思議な現象の裏側にある科学的なメカニズムを詳しく解説していきます。「なんとなく」ではなく「ロジック」で理解できると、この錯覚画像がより一層興味深いものに見えてくるはずです。
脳が補正する色の恒常性という機能

この現象を解き明かす最大のキーワード、それが「色の恒常性(Color Constancy)」です。これは、人間が進化の過程で獲得した、生きていく上で非常に重要な能力の一つです。
色の恒常性とは? 照明環境が変化しても、物体そのものが持つ色(固有色)を一定のものとして認識しようとする脳の補正機能のこと。
例えば、太古の昔、森の中で果物を探していた人類を想像してみてください。木漏れ日(緑っぽい光)の下でも、夕暮れ(赤い光)の下でも、「熟れた赤い実」を正しく「赤」と認識できなければ、食べ物を見つけられずに死んでしまいます。だからこそ、私たちの脳は「光源の色を差し引いて、物体の本来の色を割り出す」という高度な計算を、無意識のうちに瞬時に行えるようになりました。
VANSのスニーカー画像で起きていることを、この「色の恒常性」の観点から解説すると以下のようになります。
- 脳内処理パターン①:補正機能が強く働いた場合(ピンクに見える) 脳は画像の青っぽい色味を見て、「ああ、これは日陰や青い照明の下で撮られたんだな」と判断します。すると、脳内の画像処理ソフトが起動し、「画像全体から青色成分(シアンなど)を減らす」というフィルタリングを行います。 グレー(元の画素)から青みを取り除くと、その反対色に近い赤やピンクが浮き上がってきます。同時に、青緑色に見えていた紐の部分からも青みが引かれるため、白く見えます。その結果、「ピンクのスニーカーに白い紐」という映像が脳内で完成します。
- 脳内処理パターン②:補正機能が働かなかった場合(グレーに見える) 脳は画像の青っぽい色味を見て、「これは照明のせいではなく、この物体自体がこういう色なのだろう」と判断します。あるいは、光源の情報が足りなさすぎて判断を保留し、目に入った情報をそのまま採用します。 その結果、画像のピクセルデータに忠実な「グレーのスニーカーに青緑色の紐」という映像がそのまま知覚されます。
つまり、ピンクに見えている人は、脳が「現実を歪めて(補正して)」本来の姿を見ようと努力した結果であり、グレーに見えている人は、脳が「ありのままの光情報」を受け取った結果と言えます。どちらが正しい脳の使い方というわけではなく、脳がどの戦略を選んだかの違いに過ぎません。
朝型や夜型など生活習慣による違い
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さらに興味深い研究として、「普段どのような光の下で生活しているか」が、この色の見え方に影響を与えているという説があります。ニューヨーク大学の神経科学者、パスカル・ウォリッシュ博士らが提唱した仮説によると、人の概日リズム(クロノタイプ)と色の知覚には相関関係があるといいます。
| 生活タイプ | 浴びている主な光 | 光のスペクトル | 脳の傾向 |
|---|---|---|---|
| 朝型人間(Larks) | 太陽光・自然光 | 短波長(青色)が多い | 「光は青いものだ」という前提を持ちやすく、画像の青みを照明だと判断して差し引く(ピンクに見える)傾向がある。 |
| 夜型人間(Owls) | 人工照明(電球など) | 長波長(黄色・赤色)が多い | 「光は黄色いものだ」という前提を持ちやすく、画像の青みを照明だとは考えにくい。そのため青みをそのまま物体の色として受け取り、グレーに見える傾向がある。 |
これはあくまで統計的な傾向の話ではありますが、非常に理にかなっています。普段から自然光の中で過ごすことが多い人は、影の部分が青白く見える現象に慣れています。そのため、青被りした写真を見たときに、脳が自動的に「これは影の中だな」と解釈し、青をカットする処理を行いやすくなるのです。逆に、人工的な照明の下で過ごすことが多い人は、青い光を「照明のせい」にする回路が働きにくいのかもしれません。
もちろん、これだけで全てが決まるわけではありませんが、「自分は超夜型だからグレーに見えるのかな?」と考えてみるのも面白いですよね。実際に私の周りでリサーチしてみても、夜更かし好きの友人はグレー派が多く、健康的な生活をしている友人はピンク派が多い傾向があり、妙に納得してしまいました。
グレーの靴がピンクに見える方法

ここまで記事を読み進めても、「理屈は分かった。でも、私の目にはどう頑張っても薄汚れたグレーのスニーカーにしか見えない! ピンクに見えるなんて集団幻覚じゃないのか?」と疑心暗鬼になっている方もいるかもしれません。その気持ち、痛いほどよく分かります。私も最初は頑固な「グレー派」だったので、ピンク派の人たちが信じられませんでした。
しかし、諦めるのはまだ早いです。実は、脳にいくつかの「ヒント」や「強制力」を与えてあげることで、意図的に色の補正機能(スイッチ)をオンにし、ピンク色を知覚させる裏技が存在します。これはある種の「脳のハッキング」です。
ぜひ、お手元のスマートフォンを使って、以下のステップを順番に試してみてください。脳の解釈が切り替わった瞬間、魔法のように色が変化する「アハ体験」が待っていますよ。
【ステップ1】画面の輝度(明るさ)をMAXにする
これが最も手軽で、かつ効果が高い方法です。
- やり方: スマートフォンの画面設定を開き、明るさを最大(100%)にしてください。
- なぜ効くのか?: 画面が暗いと、脳は「この写真は暗い場所(=光が足りない場所)にある」と判断し、色の補正を行わずにそのままの色(グレー)を見ようとします。逆に、画面を目が痛くなるほど明るくすると、脳は「強い光が当たって色が白飛びしている状態だ」と錯覚します。「過剰な光のせいで色が薄くなっているだけだ」と脳が判断を変えることで、強力な補正機能が働き出し、ピンク色が出現しやすくなります。
【ステップ2】「ナイトシフト」や「ブルーライトカット」をONにする
もしスマートフォンの機能にあれば、これも非常に有効な手段です。
- やり方: iPhoneなら「Night Shift」、Androidなら「夜間モード」や「ブルーライトカット」機能をオンにし、画面の色温度を暖色系(オレンジっぽく)にします。
- なぜ効くのか?: この錯覚の元凶は、画像全体にかかった「青いフィルター」です。画面設定で物理的に青色光をカットし、黄色~オレンジ色のフィルターを重ねることで、画像上の青みが相殺されます。青というノイズが減ることで、脳が本来の「ピンク」を認識しやすくなります。
【ステップ3】「ここは白だ」と脳に自己暗示をかける(アンカーの設定)
精神論のように聞こえますが、これはトップダウン処理という脳の機能を活用した立派なテクニックです。
- やり方: スニーカーの「ソール(ゴム底)」や「シューレース(靴紐)」の、最も明るい部分をじっと凝視してください。そして、心の中で強くこう念じます。 「これは青緑色じゃない。日陰にある『白』だ。影になって暗いだけの『白』なんだ」
- なぜ効くのか?: 脳に「ここが基準の白(ホワイトバランスの基準点)」だと強制的に定義させる作業です。脳が「紐=白」という定義を受け入れた瞬間、画像全体の色彩計算が一瞬で書き換わり、「紐が白なら、本体はこの色(ピンク)になるはずだ」という整合性を取る処理が走ります。
【ステップ4】画像の一部を隠してコンテキストを断つ
周辺の情報を遮断することで、脳の誤った思い込みをリセットします。
- やり方: 親指と人差し指でフレームを作り、スニーカーのつま先部分だけ、あるいは紐の一部だけが見えるように、周りの背景や他の部分を隠してください。あるいは画像を拡大(ピンチアウト)して、画面いっぱいに靴紐のアップを表示させます。
- なぜ効くのか?: 背景の暗さや全体の雰囲気から、脳が勝手に作り上げた「撮影状況の文脈(コンテキスト)」を強制的に断ち切ります。限られた情報だけで色を再判定させると、補正なしのグレーではなく、記憶色に近いピンクとして認識される確率が高まります。
一度見えると戻れない?「不可逆性」の不思議 これらの方法を試して、一度でも「あ!ピンクだ!」と認識できてしまうと、今度は逆にグレーに見ることが非常に難しくなります。これは脳が「正解(もっともらしい解釈)」を一度学習すると、その回路を優先して使うようになるためです。「見え方」というのは、単なる感覚ではなく、脳による学習と記憶の結果だということがよく分かりますね。
実物の正解色と画像の青みフィルター

最後に、議論に決着をつけるために、それぞれのスニーカーの「正解(実物の色)」をはっきりさせておきましょう。ネット上の論争には、必ず答えが存在します。
まず、VANSのオールドスクールですが、正解の色は「ピンクと白」です。 具体的には、VANSのラインナップにあった「マホガニーローズ(Mahogany Rose)」というカラーのモデルで、アッパーは落ち着いたピンク色、サイドのラインとソールは真っ白のデザインです。グレーに見えていた方、残念ながらそれは錯覚でした。しかし、あなたの脳が悪いわけではありません。撮影された写真があまりにも青被りしていたため、脳が「これをそのままの色として受け取ろう」と判断しただけなのです。
次に、ビリー・アイリッシュのNIKE「エア モア アップテンポ」ですが、こちらの正解は「ミントグリーンと白」です。 NIKEの公式カラー名は「Barely Green(ベアリーグリーン)」といって、「かろうじて緑」という意味の通り、非常に薄いパステルカラーのグリーンです。ビリー・アイリッシュさんが言っていた通り、実物は爽やかなミント色なんですね。 こちらに関しては、ピンクに見えた人の方が錯覚を起こしています。おそらく、写真の緑色が微妙な色合いだったため、脳が「これは緑色の照明が当たっている白い靴(あるいはピンクの靴)だ」と深読みしすぎてしまい、補色関係にあるピンクを作り出してしまった可能性があります。
どちらのケースも、カメラという機械が捉えた「光の記録」と、それを解釈する「人間の脳」との間に生じたズレが原因でした。デジカメやスマホのカメラには「オートホワイトバランス」という機能がありますが、人間の脳にもそれと同じ、いやそれ以上に高度なホワイトバランス機能が備わっているということを、これらのスニーカー画像は証明しているのです。
まとめ:スニーカーの色の錯覚を楽しもう

スニーカーの色の錯覚について、話題の背景から脳科学的なメカニズム、そして正解の色まで詳しく解説してきました。たった一枚の画像が、これほどまでに私たちの知覚の不思議を教えてくれるとは驚きですよね。
重要なのは、ピンクに見えてもグレーに見えても、それはあなたの脳が正常に働いている証拠だということです。右脳派だ左脳派だと一喜一憂する必要もありませんし、友人と見え方が違っても喧嘩する必要もありません。「私の脳はこう解釈したけど、あなたの脳はどう解釈した?」と、お互いの「主観的な世界」の違いを楽しむツールとして、このスニーカー画像を活用してみてはいかがでしょうか。
私たちが普段見ている景色も、実は脳が一生懸命編集して見せてくれている「バーチャルリアリティ」のようなものかもしれません。そう考えると、普段のスニーカー選びや街歩きも、少し違った視点で楽しめるようになりそうですね。もしまた新しい「色の錯覚画像」が話題になったら、ぜひこの記事で紹介したメカニズムを思い出して、脳の不思議を体感してみてください。

