スニーカーが「ぴったりすぎる」は危険サイン? 正しい捨て寸の目安と、きつい靴をラクにする調整テク完全ガイド

スニーカー ぴったり すぎる スニーカー

念願の新しいスニーカーを手に入れた瞬間、誰しも心が躍るものです。鏡の前で合わせたときは完璧に見えたその一足。しかし、いざ履いて街へ出かけてみると、30分もしないうちにつま先がジンジンと痛み出し、小指が締め付けられるような感覚に襲われた経験はありませんか。「せっかく買ったのに、サイズ選びに失敗したかも…」と落ち込むその気持ち、痛いほどよくわかります。

実は、スニーカーにおいて「隙間が全くないジャストサイズ」は、必ずしも正解ではありません。むしろ、足の健康を脅かす危険なサインである可能性が高いのです。無理をして履き続ければ、単なる靴擦れでは済まない深刻な足のトラブルを招くこともあります。

そこで今回は、スニーカー好きの私がこれまでに数々の失敗から学んだ、きつい靴を少しでも快適に伸ばす具体的な方法や、正しい「捨て寸」の目安、そして足に馴染むまでのリアルな期間について詳しくお話しします。もう二度とサイズ選びで泣かないための知識を、一緒に身につけていきましょう。

  • スニーカーに必要な「捨て寸」の正解と痛みの根本原因がわかる
  • きつい靴を無理に履き続けることで起こる足のトラブルを理解できる
  • 自宅にあるもので実践できるきついスニーカーの対処法を学べる
  • 次回の購入で失敗しないための正しいサイズ選びのコツを知れる

スニーカーがぴったりすぎるリスクと判断基準

「ジャストフィット」という言葉の響きは魅力的ですが、スニーカーに関しては「足の実寸と全く同じサイズ」を選ぶのは実はあまりおすすめできません。ここでは、なぜ靴の中に「無駄」とも思える空間が必要なのか、そしてぴったりすぎると具体的にどのようなリスクがあるのかについて解説します。

理想的なスニーカーの捨て寸の目安

スニーカーのつま先部分を指で押し、適切な捨て寸(隙間)があるかを確認している様子

スニーカーを選ぶ際、最も重要視すべきなのが「捨て寸(すてすん)」と呼ばれるつま先の余裕です。一般的に、スニーカーには1.0cm〜1.5cm程度の捨て寸が絶対に必要だと言われています。

なぜ、わざわざ隙間を作る必要があるのでしょうか。それは、私たち人間の足の構造に理由があります。人が歩くとき、着地の衝撃を吸収するために足のアーチ(土踏まず)が沈み込み、指が扇状に広がって前方に伸びる動きをします。これを専門的には「ウィンドラス機構」などと関連付けて説明されることもありますが、簡単に言えば、「歩いている時の足は、立っている時よりもサイズが大きくなっている」のです。

この点について、足の専門機関も注意を促しています。

ぴったりとフィットしすぎる靴ではなく、あなたが立っているとき、靴の中であなたの最も長い指の前に十分なスペース(横にした指1本分の幅)があることを確認してください。歩くと靴の中で足は前後にずれるため、立った状態でぴったりした靴を選んでしまうと、歩いているうちに前につっかえてしまいます。

(出典:一般社団法人 日本フットケア・足病医学会『靴の選び方』

ポイント

試着室で立った状態でつま先が靴の壁に触れている場合、歩行中は一歩ごとに体重の何倍もの力でつま先が靴の内壁に衝突し続けていることになります。これが、長時間歩行で激痛が生じる最大の原因です。

また、足のサイズは一日の中で変動します。重力の影響で水分が下半身に溜まるため、朝と夕方では足の体積が変わり、夕方には大きくむくむことがほとんどです。「朝はぴったりで調子が良かったのに、帰宅時には靴がパンパンになって辛い」という現象は、この捨て寸の余裕が不足している証拠です。

足に馴染むまでの期間と素材の特徴

「最初はきつくても、履いているうちに伸びて馴染むから大丈夫」という店員さんの言葉を信じて買ったものの、いつまで経っても痛いまま…という経験はないでしょうか。確かにスニーカーはある程度足に馴染みますが、その期間や「どこまで伸びるか」は、アッパーに使われている素材によって天と地ほどの差があります。

素材 馴染むまでの目安 特徴と注意点
キャンバス・メッシュ 3日〜1週間 比較的早く足の形に馴染みますが、生地自体に伸縮性はあまりありません。横幅がきつい場合、物理的に広がる限界が早いため注意が必要です。
ニット・合成繊維 5日〜10日 伸縮性が非常に高く、初日からフィットしやすいのが特徴です。ただし、ホールド感も強めに設計されていることが多く、圧迫感が苦手な人はサイズアップが必要です。
天然皮革(レザー) 2週間〜1ヶ月 最初は硬く痛みを感じやすいですが、最も足の形にフィットして伸びてくれる素材です。体温と汗で革が柔らかくなり、自分の足だけの形に育ちます。
合成皮革 馴染みにくい 型崩れしにくく水に強いのがメリットですが、繊維構造が緻密でほとんど伸びません。「履いていれば伸びる」という期待は禁物で、最初からジャストサイズを選ぶ必要があります。
私の経験談

以前、オールレザーのスニーカーを「少しきついけどカッコいいから」と購入しました。最初の2週間は厚手の靴下を履いて家の中で過ごし、徐々に革を伸ばしました。今では最高の相棒ですが、逆に合成皮革のモデルできついものを選んでしまった時は、半年履いても痛みは変わらず、結局泣く泣く手放すことになりました。

もし、毎日履いても2週間以上痛みが改善しない場合は、単に「馴染んでいない」のではなく、そもそも「サイズが合っていない」可能性が高いと判断し、無理に履くのを中断すべきでしょう。

小指が痛い時は内反小趾に注意

靴の圧迫により赤くなった足の小指(内反小趾の初期症状)の様子

スニーカーを履いていて「つま先の長さはちょうどいいはずなのに、小指の外側だけがジンジン痛む」と感じたことはありませんか?それは、靴の縦のサイズ(レングス)ではなく、横幅(ワイズ)があなたの足の形に合っていない決定的な証拠かもしれません。

一般的に私たち日本人の足は、欧米人に比べて「甲が高く、幅が広い」傾向があると言われています。一方で、人気の高いナイキやコンバースといった海外ブランドのスニーカーは、欧米人の細長い足型に合わせて全体的にシャープなシルエット(Dワイズなど)で作られているものが多いです。この「足の形」と「靴の形」のミスマッチこそが、小指の痛みの正体です。

この圧迫感を「ただの靴擦れだから、そのうち慣れるだろう」と我慢して放置するのは非常に危険です。小指が常に外側から強く押し続けられると、小指の関節が親指側に「くの字」に曲がって変形してしまう「内反小趾(ないはんしょうし)」を引き起こすリスクが高まるからです。

【セルフチェック】こんな症状は危険信号です

あなたの足に以下のような変化が起きていないか、靴を脱いで確認してみてください。

  • 靴を脱いだ直後、小指の側面や付け根が赤く腫れている。
  • 小指の爪が外側を向いていたり、圧迫されて爪が小さく潰れていたりする。
  • 小指の付け根や側面に、硬いタコ(角質化)や魚の目ができている。
  • 裸足の状態で、小指が自然と内側に曲がっており、薬指に寄り添ったり重なったりしている(寝指)。

これらはすべて、足からのSOSサインです。内反小趾が悪化すると、靴を履いていない時でもズキズキと痛むようになるだけでなく、小指を使って正しく地面を踏ん張ることができなくなります。その結果、歩行バランスが崩れ、膝痛や腰痛など全身の不調につながる恐れさえあるのです。

もし上記のセルフチェックで思い当たる節がある場合は、そのスニーカーを無理に履き続けるのは避けるべきでしょう。デザインも大切ですが、足の健康を守るためには、後述する部分的なストレッチャーでの調整を試みるか、次回からは「ワイドモデル(2Eや4Eなどの幅広設計)」を展開しているブランド(ニューバランスなど)を選ぶなど、「縦の長さ」よりも「横の負担のなさ」を最優先にした靴選びへシフトすることをおすすめします。

つま先が痛い原因と対策の必要性

つま先が靴に当たって痛いとき、誰もが真っ先に疑うのは「この靴、サイズが小さすぎたかな?」ということだと思います。しかし、実はその痛みの原因が「小さすぎる」ことではなく、真逆の「靴の中で足が泳いでしまっている」ことにあるケースが非常に多いのをご存知でしょうか。

これを専門用語で「前滑り(まえすべり)」と呼びます。特に、日本人に意外と多い「甲が低い(足の厚みが薄い)」タイプの方や、脱ぎ履きを楽にするために靴紐を緩めたまま履いている方に頻繁に起こる現象です。

前滑りのメカニズム

車で急ブレーキをかけたとき、シートベルトをしていなければ体は前方に放り出されてしまいますよね。スニーカーも同じです。甲の部分(靴紐部分)で足がしっかりとロックされていないと、歩行時の着地の衝撃で足が靴の中で前方にスライドしてしまい、結果としてつま先が靴の先端(捨て寸の壁)に激突し続けてしまうのです。

この「前滑り」が厄介なのは、「痛いからといってサイズを大きくすると、状況がさらに悪化する」という点です。サイズを上げて靴の空間を広くしてしまうと、足を押さえる力がさらに弱まり、滑る距離と勢いが増すだけで、つま先の衝突は止まりません。むしろ、「サイズアップしたのになぜかまだ痛い」という負のスパイラルに陥ってしまいます。

あなたの痛みの原因が「サイズ不足」なのか、それとも「前滑り」なのかを見極めるために、以下の診断テストを必ず行ってみてください。

【原因特定】3ステップ診断テスト

  1. 踵(かかと)を合わせる: まず靴紐を全体的に緩め、足を入れます。つま先ではなく、踵を地面にトントンと打ち付け、靴のヒールカップに踵を隙間なく密着させます。
  2. ロックして固定する: 踵を合わせた状態をキープしたまま、つま先側から足首に向かって、普段よりも少し強めに靴紐を締め上げます。足の甲がアッパーにピタッと張り付く感覚があればOKです。
  3. 歩いて確認する: その状態で部屋の中を歩いてみてください。もし「さっきよりつま先の当たりが気にならなくなった」と感じるなら、原因はサイズ不足ではなく「前滑り(ホールド不足)」で確定です。

もしこのテストで痛みが和らぐなら、新しい靴を買い直す必要はありません。後ほどご紹介する「インソールでの調整」や「紐の結び方の工夫」で足を踵側にロックしてあげるだけで、本来あるべきつま先の捨て寸が復活し、嘘のように快適に履けるようになるはずです。

サイズ感が合わない靴を履くリスク

「せっかく高かったし、デザインが気に入っているから」と、痛みを我慢して履き続けるのはおすすめできません。足に合わない靴は、足だけの問題にとどまらず、全身の不調につながることもあるからです。

健康への深刻な影響リスク

  • 外反母趾・内反小趾: 指の変形や慢性的な痛みの原因になります。一度変形すると自然治癒は難しくなります。
  • 爪のトラブル: 爪が常に圧迫されることで、巻き爪や陥入爪、最悪の場合は爪の内出血(爪下血腫)を引き起こし、爪が剥がれてしまうこともあります。
  • アーチの崩れと疲労: 窮屈な靴の中では足指を使って正しく地面を蹴ることができません。足裏の筋力が低下し、扁平足や開張足の原因になります。また、無理な姿勢で歩くことで膝や腰への負担も増大します。

たかが靴のサイズ、と思わず、違和感を感じたら早めに対処することが、長く健康的にスニーカーライフを楽しむための絶対条件です。

スニーカーがぴったりすぎる時の対処法と選び方

では、すでに手元にある「ぴったりすぎて痛いスニーカー」はどうすれば良いのでしょうか。返品期間が過ぎてしまった、あるいは一度履いてしまったという場合でも、諦めるのはまだ早いです。ここでは、私が実際に試して効果があった対処法や、次回購入時に失敗しないための選び方のコツをご紹介します。

きついスニーカーを伸ばす裏技

物理的にスニーカーのアッパー素材を少し伸ばして、内部空間を作る方法がいくつかあります。ただし、素材によってはダメージを与える可能性もあるので、必ず自己責任で、少しずつ様子を見ながら行ってください。

ドライヤーで温める(ヒートモールディング)

これは特に合成皮革や一部の樹脂パーツが使われている靴に有効な方法です。熱による素材の軟化を利用します。

  1. 厚手の靴下(なければ普通の靴下を2枚履き)を履いて、きついスニーカーに足を入れます。かなり窮屈ですが我慢して履きます。
  2. きついと感じる部分(小指のあたりなど)に、ドライヤーの温風を20cm〜30cmほど離して当てます。※近すぎると焦げたり接着剤が剥がれたりするので注意してください。
  3. 温まって素材が柔らかくなってきたら、足指をグーパーしたり、足を踏み込んだりして革を内側から押し広げます。
  4. そのまま冷めるまで数分間待ちます。素材は「冷える瞬間に形が固定される」性質があるため、この待ち時間が重要です。

※本革は乾燥してひび割れるリスクがあり、高価なスニーカーやヴィンテージものには推奨しません。まずは目立たない場所で試すか、安価なスニーカーで練習することをおすすめします。

シューズストレッチャーを使う

最も確実で安全なのが、市販の「シューズストレッチャー(シューストレッチャー)」を使うことです。靴の中に入れてハンドルを回すことで、強力なバネやネジの力で内側から圧力をかけて物理的に広げることができます。

最近ではホームセンターやネット通販でも千円〜二千円程度で手に入ります。「ダボ」と呼ばれるプラスチックのパーツが付いているものなら、「小指のあたりだけピンポイントで広げたい」「外反母趾の部分だけ逃がしたい」といった細かい調整も可能です。一晩セットしておくだけで、履き心地が劇的に変わることもあります。

痛みを軽減する靴紐の結び方

甲の圧迫感を逃がすために靴紐をパラレル結び(はしご状)に調整している手元

特別な道具を買い足す前に、今この瞬間から試せる最も手軽な対策があります。それが、「靴紐(シューレース)の結び方を変えること」です。「たかが紐の結び方で?」と思われるかもしれませんが、紐の通し方ひとつで靴の内部の圧力分布は劇的に変化します。ここでは、きついスニーカーの痛みを和らげるために特化した3つのテクニックを伝授します。

1. 甲の圧迫感を全体的に逃がす「パラレル結び」

甲が高くて靴全体がきつく感じる方に、私が最もおすすめしたいのがこの「パラレル結び(Parallel Lacing)」です。

一般的なスニーカーの結び方(交互にクロスさせるオーバーラップなど)は、紐が重なる部分で摩擦が生じ、締め付ける力が非常に強くなります。対してパラレル結びは、紐がハトメ(穴)の間を「梯子(はしご)」のように真横に渡る結び方です。紐同士が交差しないため摩擦が少なく、足の動きに合わせて紐が伸縮する「遊び」が生まれやすいため、甲全体への圧力が分散されソフトな当たりになります。

パラレル結びの手順

  1. つま先側の左右の穴に、紐を上から通します。
  2. 片方の紐を、すぐ上の穴ではなく、一つ飛ばした穴の下から出します。
  3. もう片方の紐も同様に、反対側の空いている穴の下から出します。
  4. 出した紐をそれぞれ真横の穴に上から通します。
  5. これを繰り返し、梯子のような見た目になるように結び上げます。

2. 痛い部分の圧力をゼロにする「ウィンドウ・レーシング」

「全体的にはちょうどいいのに、外反母趾の出っ張りだけが痛い」「甲の一番高い骨の部分だけが当たって辛い」といったピンポイントの痛みには、「ウィンドウ・レーシング(部分飛ばし)」という裏技が最強の解決策です。

やり方は非常にシンプルです。痛みがある部分のハトメ(穴)にだけ、あえて紐を通さずにスキップさせます。すると、その部分には紐による締め付け圧力が一切かからず、ぽっかりと「窓(ウィンドウ)」が開いたような状態になります。

圧力をかけたくない場所を避けて結ぶことで、ホールド感を維持したまま、患部への負担だけを「ゼロ」にすることができるのです。私はこの方法で、少し幅が狭いナイキのスニーカーも快適に履けるようになりました。

3. 前滑りをガッチリ止める「ヒールロック」

前のセクションで解説した「前滑り」がつま先の痛みの原因だった場合は、「ヒールロック(ダブルアイレット)」という結び方が有効です。スニーカーの一番上にある「何のためにあるのか分からない予備の穴」を使ったことはありますか?あれは実は、この結び方をするための穴なのです。

一番上の穴を使って小さな「輪っか」を作り、その中に紐を通して締めることで、足首を強固に固定できます。足が後ろにロックされるため、歩いても足が前方に流れなくなり、結果としてつま先の捨て寸(空間)が確保され、指先の痛みが解消されます。

このように、紐の通し方を変えるだけで、まるで別の靴のような履き心地になります。お金もかからず何度でもやり直せるので、まずはご自身の足の悩みに合った結び方を試してみてください。

インソールや靴下で調整するコツ

スニーカーのサイズ調整のために厚手のインソールを薄手のフラットインソールに入れ替える様子

ドライヤーで温めたり、ストレッチャーで無理やり伸ばしたりするのは、大切なスニーカーを傷めそうで怖い…。そんな慎重派の方におすすめなのが、「靴の中身」で空間をコントロールする方法です。靴そのものには一切手を加えず、インソールや靴下の厚みをミリ単位で調整するだけで、嘘のようにフィット感が改善されることがあります。

1. 靴下を「薄手」に変えて0.5cm分の空間を稼ぐ

最も手軽で、かつ即効性があるのが靴下の変更です。私たちは普段、無意識にクッション性の高いスポーツソックスや、厚手のパイル地ソックスを選びがちです。しかし、これを薄手のビジネスソックスや、ドライ素材の薄型ソックスに変えるだけで、物理的に2mm〜4mm程度の空間が生まれます。

たかが数ミリと思うかもしれませんが、靴のサイズにおける「0.5cm(ハーフサイズ)」の違いは、実は数ミリの世界です。つまり、靴下を薄くするだけで、実質的にハーフサイズアップしたのと同じ効果が得られるのです。「夕方になるときつい」という方は、替えの薄手ソックスを持ち歩くのも賢いテクニックです。

2. インソールを「引き算」して天井を高くする

多くのスニーカー(特にハイテクスニーカー)には、クッション性を高めるために、厚みのある「立体成型カップインソール」が元々入っています。踵や土踏まず部分が盛り上がっているため、これが意外と靴内の容積を圧迫しているのです。

この純正インソールを取り外し、代わりに100円ショップやドラッグストアで売っている「フラット(平ら)な薄型インソール」に入れ替えてみてください。特にレザー製の薄いインソールなどは滑りが良く、厚みもほとんどないためおすすめです。

空間確保のイメージ

分厚い純正インソールを薄いものに変えることは、部屋のリフォームで例えるなら「床を低くして天井を高くする」作業です。これにより、甲の高さや横幅に劇的なゆとりが生まれます。

最終手段:インソールを抜く

どうしても痛くて歩けない場合の応急処置として、「インソールを抜いて直履きする」という荒技もあります。ただし、クッション性がゼロになり、靴内部の縫い目が直接足裏に当たって痛むことがあるため、あくまで一時的な避難措置として考えてください。

3. 「前滑り」にはタンパッドで逆転の発想を

もしあなたのつま先の痛みの原因が、サイズ不足ではなく「前滑り(甲が低くて足が前に突っ込んでしまうこと)」だった場合、空間を広げるのは逆効果です。むしろ、隙間を埋めて足を後ろに固定する必要があります。

そこで活躍するのが「タンパッド(レザータンパッド)」です。これはスニーカーの「ベロ(シュータン)」の裏側に貼り付けるパッドのことです。 これを使うと、甲を上から押さえて足を踵側にグッと押し戻してくれます。その結果、踵がヒールカップに固定され、つま先に本来あるべき「捨て寸」が復活するのです。見た目にも全く響かない、知る人ぞ知る神アイテムです。

  • きつい時: 薄手の靴下、薄型インソールへの交換で「広げる」。
  • 前滑りの時: タンパッドや踵用ハーフインソールで「止める」。

このように、痛みの原因に合わせてグッズを使い分けることが、快適なスニーカーライフへの近道です。

失敗しないためのサイズ選びのポイント

「お店で履いた時は良かったのに、なぜか家に帰ると小さく感じる…」。この怪奇現象とも言える失敗をこれ以上繰り返さないために、次回の購入時に必ず実践してほしい「試着の鉄則」をまとめました。ただ足を入れるだけでなく、プロ並みの厳しいチェックを行うことで、シンデレラフィットの一足に出会える確率が格段に上がります。

1. 試着のタイミングと準備

まず大前提として、人間の足は一日の中でサイズが変化します。午前中に買った靴が夕方にはパンパンになるのは、重力で水分が足元に溜まり、足がむくむからです。

  • 夕方15時以降を狙う: 足が最も大きくむくんでいる時間帯に合わせるのが、サイズ選びの安全策です。「最大の足」に合わせておけば、朝の「最小の足」の時は紐で締めれば対応できますが、逆は不可能です。
  • 「本番用」の靴下を持参する: 薄手のカバーソックスで試着して、実際に履くときは厚手のスポーツソックス…では、サイズ感が0.5cm以上ズレてしまいます。そのスニーカーを履くときに合わせたい靴下を必ず持参しましょう。

2. 絶対にやってはいけない「つま先トントン」

正しい靴の履き方として、つま先ではなく踵(かかと)を地面に合わせてフィットさせている様子

靴を履くとき、無意識につま先を地面にトントンと打ち付けて、足を前の方に寄せていませんか?これはサイズ選びにおいて最大のタブーです。

つま先トントンをすると、足が前滑りして踵部分に隙間ができます。その隙間を見て「あ、余裕があるな」と勘違いしてしまうのです。しかし、実際に紐を締めると踵は後ろに固定されるため、その「余裕」は消滅し、ただのきつい靴になってしまいます。

【正しい手順】踵(かかと)トントンが正解

  1. 足を入れたら、踵を地面にトントンと打ち付け、ヒールカップに踵を隙間なく密着させます。
  2. その状態で(踵を浮かさずに)、下から順番に紐をしっかり締め上げます。
  3. 紐を結び終えて初めて立ち上がり、サイズ感を確認します。

3. 立って、しゃがんで、最終ジャッジ

座ったまま「うん、いい感じ」と判断してはいけません。必ず立ち上がり、体重をかけた状態で以下のポイントをチェックしてください。

  • 捨て寸チェック: つま先に1.0cm〜1.5cm(手の親指の幅くらい)の空間があり、指が自由に動かせるか。
  • アキレス腱チェック: 紐を締めた状態で、アキレス腱(踵の後ろ)に人差し指の第一関節が入るくらいの僅かな余裕があるか。ここが食い込んでいると靴擦れの原因になります。
  • 屈曲チェック: その場でしゃがみ込んでみてください。足が大きく曲がった状態で、つま先が靴の内壁に当たらないか、甲が食い込んで痛くないかを確認します。歩行時はこの「曲がった状態」が繰り返されるため、ここで違和感がある靴は長時間の歩行に耐えられません。
  • ボールジョイントの位置: 足の親指の付け根(一番出っ張っている骨)が、靴の「一番幅が広い部分」に収まっているか確認しましょう。ここがズレていると、歩くたびに足と靴が喧嘩をして疲れてしまいます。

4. 通販なら「2足買い」が今の常識

近くに店舗がない、あるいは目当てのモデルがネットにしかない場合も多いでしょう。そんな時は、Amazonの「Prime Try Before You Buy」やロコンドの「自宅で試着」サービスなどをフル活用しましょう。

迷ったら両方カートへ

サイズ感に不安がある場合は、「27.0cm」と「27.5cm」の前後サイズを両方注文してしまいます。自宅でじっくり履き比べ、自分の足に合う方だけを購入し、合わなかった方は返品するのです。「サイズ交換」の手間を待つよりも、最初から比較して選ぶ方が確実で賢い買い方です。

結論:迷ったら「大きい方」を選ぶ勇気を

最後に、サイズ選びの究極の極意をお伝えします。もし2つのサイズで迷ったら、迷わず「大きい方のサイズ」を選んでください。

スニーカーにおいて「大は小を兼ねる」は真理です。大きい靴は、インソールを入れたり、厚手の靴下を履いたり、紐をきつく締めたりすることで、いくらでもフィット感を調整(リカバリー)できます。しかし、小さい靴を物理的に大きく伸ばすことには限界があり、素材へのダメージリスクも伴います。

「少し大きいかな?」という不安は調整で消せますが、「少しきついかな?」という不安は痛みとなって襲ってきます。0.5cmのゆとりは、快適への保険だと考えましょう。

スニーカーがぴったりすぎる問題のまとめ

スニーカーが「ぴったりすぎる」状態は、単にサイズ選びの成功ではなく、実は将来的な足のトラブルの予兆かもしれません。今回の記事のポイントを最後におさらいします。

  • スニーカーには1.0cm〜1.5cmの捨て寸(つま先の余裕)が絶対に必要です。
  • 足が馴染むまでの期間は素材によりますが、2週間以上痛いなら無理は禁物です。
  • きつい靴は、ドライヤーやストレッチャーで多少伸ばせる可能性がありますが、素材へのダメージに注意しましょう。
  • 紐の結び方(パラレル結び)やインソールの変更で、圧迫感を軽減できます。
  • 次回からは「夕方の試着」と「迷ったら大きいサイズ」を心がけましょう。

お気に入りのスニーカーだからこそ、痛みなく快適に履きたいですよね。痛みを我慢して履くのではなく、少しの工夫で自分だけのフィット感を手に入れてください。諦める前に、ぜひ今回ご紹介した方法を一つでも試してみてくださいね。

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